平成18年版の情報公表制度が迷走した理由
平成18年から実施された「介護サービス情報の公表制度」は、本来の外部評価とは「似て非なるもの」であると、現場からの批判を受ける形となりましたね。
多くの人材と費用が投入されながら、調査情報が有効に活用されないまま、大いなる不評のうちに幕を閉じてしまいました。現在、この制度は、各都道府県に運用が任され、中途半端な形にとどまっています。
本来、情報公表制度は、介護サービスの内容に関する情報を、わかりやすい形で市民に公開して、サービス選択に資するのが目的だったはずなのです。それなのに、なぜ運用に失敗してしまったのでしょうか?
この制度の項目設定に携わった委員の意見や、事業者として調査を受けた経験、調査員として赴いた経験など、自分が見聞きした一連の経過から、制度運用失敗の原因を、下記のようにまとめてみました。
1.制度導入に関わった人たちや集団が「同床異夢」であった。社会的要請から純粋に介護サービスの情報開示を推進してきた人たちと、この制度で「ひと稼ぎ」しようとした人たちとが混在しており、一部地域における制度の運用は、結果として後者の利権が絡む草刈り場の、いわば「ぼったくりシステム」と化してしまった。
2.調査員の資質に問題があった。調査項目については確かに全調査員に対し共通の研修がなされたが、調査員の中にはマナーをわきまえない人物も含まれており、調査先での非常識な言動により批判を受けた。
3.事業者側にモチベーションの落差があった。この情報公表を機会に、これまで具備されていなかった部分の補完をめざした事業所と、情報公表に理解を示さない事業所との意識の違いが大きかった。
4.義務的に調査手数料や公表手数料を徴収されるシステムが、制度運用に懐疑的な事業所の徒労感を強めた。
5.調査情報は、市民が真に知りたい情報と乖離していた。基本情報のほうは、サービス選択に際して一定程度の参考になったが、たとえば「中間管理職の離職率」のような、本当に大事な情報が欠けていた。
このような理由から、情報公表の全国的な運用は挫折してしまいましたが、この失敗を糧にして、私たちは望ましい外部評価のあり方を考察していかなければならないでしょう。
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