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2013年4月 9日 (火)

ワーグナー楽劇の面白さ(3)

ワーグナーは歌劇の台本を自分で制作していますが、当初から、ドイツにとって外国を舞台にした作品が続いていました。

・妖精  トラモント王国(架空の国)

・恋はご法度  シチリア(現在はイタリア国内)

・リエンツィ  ローマ(現在はイタリア国内)

・さまよえるオランダ人  ノルウェー

・・・と、ここまではドイツ以外の地域が舞台となっています。そのあと、

・タンホイザー  テューリンゲンのヴァルトブルク(中世ドイツの一領邦。ただし第1幕の冒頭は架空の国ヴェーヌスベルク)

・ローエングリン  ブラバント(中世ドイツの一領邦。現在はオランダ)

ようやく本格的にドイツを舞台にした作品になります。その後は、

・トリスタンとイゾルデ  コーンウォル(現在は英国内)→カレオール(現在はフランス国内)

・ニュルンベルクのマイスタージンガー  ニュルンベルク(現在はドイツ国内)

・ニーベルングの指環  ヴァルハラ、ニーベルング→ライン川沿岸、総じてドイツを中心にしたゲルマン世界全域

・パルジファル  モンサルヴァート(架空の国)

「指環」はゲルマン神話を題材にして「権力」の醜さを描いた大作ですが、ワーグナーの掉尾を飾るパルジファルでは、また架空の聖杯の世界に舞台を移しています。ドイツ帝国が統一され、民族国家が安定するに連れて、ローエングリンやマイスタンジンガーのように、あえて「ドイツ」を意識した作品を世に出す重要性も薄れたということになるのでしょうか。

ワーグナー自身のメンタリティの変遷を頭に置きながら、後半期の作品を味わってみるのも、面白いでしょう。

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