ヴェルディ歌劇の面白さ(2)
いま、衛星放送「クラシカ・ジャパン(東北新社)」で、「Tutto Verdi」という企画を放映しています。これはヴェルディ生誕200周年に当たる今年一年を通じて、イタリアのパルマを中心に展開されたヴェルディ全作品(歌劇すべてとレクイエムを含む27作品)上演の録画を、順次紹介していくというものです。これを視聴していると、ヴェルディ初期の若々しい時代の作品から、後期の熟成された舞台芸術までを通覧できるというわけです。
ヴェルディはワーグナーのように自分で台本を書かなかった(その方面の才能が欠けていたとも言われていますが・・・)ために、前期には劇場や出資側から割り当てられた台本作家の題材に振り回され、不本意な作品を仕上げざるを得なかった時期もありました。また、初期から前期にかけてのヴェルディは、一年に2つも3つも歌劇を書き上げており、限られた期間に作品を量産していた傾向があります。この時期の作品の中に、凡作もいくつか混じっているのには、このような事情も影響しています。
初期・前期15作のうち、イタリアを舞台としたものが5作を占めています。「オベルト(ヴェローナ)」「十字軍のロンバルディア人(ミラーノ)」「二人のフォスカーリ(ヴェネーツィア)」「アッティラ(古代アクィレイア)」「レニャーノの戦い(ミラーノ)」。このうち「ロンバルディア人」「アッティラ」「レニャーノ」の3作は、「イタリア」の国・国民の意識を強く前面に出した、いわゆる「愛国オペラ」に分類されます。また「ナブッコ」「マクベス」など国外の土地を舞台にした作品の中にも、イタリア人の愛国心を比喩的に表現しているものが含まれます。
ヴェルディがこの状況から脱して、登場人物の心の内面を劇的な音楽によって表現していくスタイルへと、変貌を遂げる契機になったのは、前期も終りに近い第14作「ルイザ‐ミラー」。この作品はオーストリアが舞台ですが、その後のヴェルディ諸作品のさきがけになった注目作と言えましょう。そして第16作の「リゴレット」から、いよいよ傑作が並び立つ中期に入っていきます。
最近のコメント