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2013年4月

2013年4月25日 (木)

ヴェルディ歌劇の面白さ(2)

いま、衛星放送「クラシカ・ジャパン(東北新社)」で、「Tutto Verdi」という企画を放映しています。これはヴェルディ生誕200周年に当たる今年一年を通じて、イタリアのパルマを中心に展開されたヴェルディ全作品(歌劇すべてとレクイエムを含む27作品)上演の録画を、順次紹介していくというものです。これを視聴していると、ヴェルディ初期の若々しい時代の作品から、後期の熟成された舞台芸術までを通覧できるというわけです。

ヴェルディはワーグナーのように自分で台本を書かなかった(その方面の才能が欠けていたとも言われていますが・・・)ために、前期には劇場や出資側から割り当てられた台本作家の題材に振り回され、不本意な作品を仕上げざるを得なかった時期もありました。また、初期から前期にかけてのヴェルディは、一年に2つも3つも歌劇を書き上げており、限られた期間に作品を量産していた傾向があります。この時期の作品の中に、凡作もいくつか混じっているのには、このような事情も影響しています。

初期・前期15作のうち、イタリアを舞台としたものが5作を占めています。「オベルト(ヴェローナ)」「十字軍のロンバルディア人(ミラーノ)」「二人のフォスカーリ(ヴェネーツィア)」「アッティラ(古代アクィレイア)」「レニャーノの戦い(ミラーノ)」。このうち「ロンバルディア人」「アッティラ」「レニャーノ」の3作は、「イタリア」の国・国民の意識を強く前面に出した、いわゆる「愛国オペラ」に分類されます。また「ナブッコ」「マクベス」など国外の土地を舞台にした作品の中にも、イタリア人の愛国心を比喩的に表現しているものが含まれます。

ヴェルディがこの状況から脱して、登場人物の心の内面を劇的な音楽によって表現していくスタイルへと、変貌を遂げる契機になったのは、前期も終りに近い第14作「ルイザ‐ミラー」。この作品はオーストリアが舞台ですが、その後のヴェルディ諸作品のさきがけになった注目作と言えましょう。そして第16作の「リゴレット」から、いよいよ傑作が並び立つ中期に入っていきます。

2013年4月17日 (水)

漢字の成り立ちを考えてみよう(1)

拙著『介護職の文章作成術(厚有出版)』の第3章、100ページのところで、「啓蒙」が不快用語であることを説明しています。N-Pocketの井ノ上さんがブログで言及してくださっていますので、繰り返しませんが、「蒙」の意味をきちんと漢和字典で調べていれば、この言葉を一般の(専門家でない)市民に対して使うのが、時代遅れで不適切であることを理解できます。

他の例も挙げましょう。「案」という言葉。「案」の文字は「つくえ(机)」を意味します。したがって、ケアプランも原案の段階ではまだ机上のものであり、利用者と向き合って、説明しながら了解・同意を得ることで、はじめて正式なケアプランになるのです。ケアマネジャーの皆さん、特に施設のケアマネジャーさんは、一人ひとりの利用者に対して、ケアプランを「案」から正式なものにする手順を、丁寧にたどっているでしょうか?

このように、漢字そのものの意味をしっかり確認することによって、無用のトラブルや中途半端な仕事から遠ざかる契機になりますが、さらに漢字の「成り立ち」にまで踏み込んで行くと、より深みのある使い方ができると思います。

たとえば、文章の「章」。発音が「しょう」なので、「立」+「早(そう)」という構成の文字だと錯覚していませんか? しかし、正しくは「音」+「十」。「十」は数の節目、一つのまとまりを意味します。ですから、楽曲の「第○楽章」のような使い方が、「章」の文字のもっとも本来的な使用法です。つまり、まとまりがない漫然とした「文章」などあり得ないことになります。

また、介護の「介」。人が二人助け合っている姿のように思えてしまいます。しかし、本来の意味は「区切り」。「介」は要するに「界」のことです。人と人とが、それぞれの分をわきまえ、しっかりと互いの区切りを設ける。その上で隣人として助け合うことが大切なのです。専門的支援者としての「区切り」ができていない介護職員さんは、「介」の文字の原点に帰って、自分自身の専門性を見つめ直してください。

このように、4,000年の歴史を持つ漢字も、その根源にさかのぼってみることで、現代の私たちの生活や仕事のあり方に、大きな示唆を与えてくれます。漢字の成り立ちを考えてみることは、自分自身を成長させる好機になるかも知れません。

(P.S. 私の体調不振と、出版社側の事情のため、第二作の出版がたいへん遅れており、申訳ありません。初夏までには出る予定ですので、具体的には後日当ブログで予告いたします)

2013年4月 9日 (火)

ワーグナー楽劇の面白さ(3)

ワーグナーは歌劇の台本を自分で制作していますが、当初から、ドイツにとって外国を舞台にした作品が続いていました。

・妖精  トラモント王国(架空の国)

・恋はご法度  シチリア(現在はイタリア国内)

・リエンツィ  ローマ(現在はイタリア国内)

・さまよえるオランダ人  ノルウェー

・・・と、ここまではドイツ以外の地域が舞台となっています。そのあと、

・タンホイザー  テューリンゲンのヴァルトブルク(中世ドイツの一領邦。ただし第1幕の冒頭は架空の国ヴェーヌスベルク)

・ローエングリン  ブラバント(中世ドイツの一領邦。現在はオランダ)

ようやく本格的にドイツを舞台にした作品になります。その後は、

・トリスタンとイゾルデ  コーンウォル(現在は英国内)→カレオール(現在はフランス国内)

・ニュルンベルクのマイスタージンガー  ニュルンベルク(現在はドイツ国内)

・ニーベルングの指環  ヴァルハラ、ニーベルング→ライン川沿岸、総じてドイツを中心にしたゲルマン世界全域

・パルジファル  モンサルヴァート(架空の国)

「指環」はゲルマン神話を題材にして「権力」の醜さを描いた大作ですが、ワーグナーの掉尾を飾るパルジファルでは、また架空の聖杯の世界に舞台を移しています。ドイツ帝国が統一され、民族国家が安定するに連れて、ローエングリンやマイスタンジンガーのように、あえて「ドイツ」を意識した作品を世に出す重要性も薄れたということになるのでしょうか。

ワーグナー自身のメンタリティの変遷を頭に置きながら、後半期の作品を味わってみるのも、面白いでしょう。

2013年4月 1日 (月)

4月1日用の発表は・・・

〔沖ノ鳥島に介護施設???

有限会社ジョアンに近い筋によると、このたび静岡県浜松市の介護業界有志の間で、東京都の沖ノ鳥島に介護施設を建設しようという計画が進行していることが明らかになった。

同計画では、平凡な日常に飽きた高齢者のため、定員29人の小規模介護施設(種別未定)を同島岩礁の上に建設し、一年契約で利用者に絶海の孤島の風景を楽しんでもらおうというもの。見渡す限りのオーシャン・ビューのみならず、潮の満ち引きによる一部施設の海面下への水没、「沖ノ鳥島は島ではない」と主張して近海の資源を狙う外国軍艦の出没まで観られる、スリル満点の環境。

もちろん、日本の実効支配を強化するための貢献であるため、ホテルコストは全額外務省が負担する見込み。介護保険の一割負担のみで、すべての設備が利用可能という格安企画!

5月1日から入居者募集開始予定とのこと。お申し込みはお早めに!〕

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