ヴェルディ歌劇の面白さ(5)
7日(土)、上野の東京文化会館でトリノ王立歌劇場引っ越し公演、ヴェルディの『仮面舞踏会』を観賞。
指揮はジャナンドレア‐ノセダ(敬称略、以下同)、演出はロレンツォ‐マリアーニ。キャストはリッカルドがラモーン‐バルガス、アメーリアがオクサナ-ディカ、レナートがガブリエーレ‐ヴィヴィアーニ、ウルリーカがマリアンネ‐コルネッティ、オスカルが市原愛、サムエルがファブリツィオ‐ベッジ、トムがホセ‐アントニオ‐ガルシア。
もともと、この歌劇の題材は、スウェーデン国王グスタフ3世が仮面舞踏会の最中に暗殺された事件(1792)だったのですが、当時の官憲の圧力により、舞台設定がストックホルムから英領ボストンに変更され、同時に登場人物の名前も変えられました。その後、ストックホルム版も復活して、ときどき公演されています。今回の上演はボストン版でした(写真はプログラムです)。
マリアーニの演出の特徴は、舞台が白・黒・赤の三色で埋め尽くされていたという一点に尽きます。白と黒は単純な善悪の区別ではなく、同じ人物(たとえばレナート)の衣装が白になったり黒になったりと、登場人物の心理的変化を微妙に表現しています。赤について言えば、第一幕でウルリーカがリッカルドの死を予言したとき、リッカルドの顔に赤いスポットライトが当たる場面は秀逸。また第三幕では、レナートとアメーリアの愛が育まれた場所だったベッドの赤い枠が、折れて床に倒れていたのが象徴的でした。
歌手はバルガスがリッカルドを好演。やや抑揚をつけ過ぎて、一部、声が小さくて聞こえにくかった箇所がありましたが、演技は見事でした。ヴィヴィアーニのレナートは朗々としたバリトンの歌唱で会場を魅了し、ディカのアメーリアも出色の出来でした。ベッジのサムエルはあまり目立ちませんでしたが、コミカルな歌唱で第二幕の「レナート嘲笑」の場面を聞きごたえあるものにしていました。対照的にコルネッティのウルリーカは、会場からの拍手は多く寄せられたものの、声の揺れがやや大きく、私の耳では聞きづらい歌唱でした。
その夜は江戸川区で開業する同業者と食事。翌日、午前中はいくつか書店などを散策しましたが、最後に八重洲ブックセンターへ立ち寄ったとき、介護関係の書籍のコーナーで、何と自分の著書が平積みにされているのを発見してビックリ!
地元ではほとんど書店の店頭にさえ見かけないので、驚きでしたが、そこそこに需要はあるんだなあと思い、嬉しい気持ちで浜松へ帰りました。
« 「歩くケアマネ」の現実は?(2) | トップページ | つくられた暴君(3) »
「文化・芸術」カテゴリの記事
- ヴェルディ歌劇の面白さ(17)(2020.12.18)
- 「地位が下がらないチャンピオン」の怪(2020.11.30)
- ヴェルディ歌劇の面白さ(16)(2020.10.26)
- 「お」「も」「て」「な」「し」の何が良かったのか?(2020.01.22)
- 片付け下手の断捨離(4)-ヴェルディ歌劇のCD・DVD(2019.12.04)
「著作」カテゴリの記事
- どんなに若く未熟な駆け出しのスタッフに対しても、丁寧な言葉で話しましょう(2020.12.31)
- 参照すべき書籍(2019.10.09)
- 「聞くは一時の恥」(2019.02.05)
- 【お知らせ】小著の販売状況について(2015.11.03)
- 30年の思い(4)(2015.10.07)
コメント