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2014年1月 6日 (月)

ら抜き言葉

2014年、あけましておめでとうございます。

今年最初のエントリーは、国語の勉強から始めましょう。

意識しないうちにもしばしば使ってしまう言い回しの一つに、いわゆる「ら抜き言葉」があります。「起きれる」「食べれる」「来れる」など。これらは文法的に「破格」(規則にのっとらないこと)の語法に含まれますが、広義の「可能動詞」の一種と見なされています。

可能動詞とは、もともと五段活用だった動詞が、「・・・できる」の意味を表すために、下一段活用を併せ持つようになったものです。

たとえば「書く」という動詞は五段活用で、「書かない・書こう(未然)」「書きます(連用)」「書く(終止)」「書くとき(連体)」「書けば(仮定)」「書け(命令)」となります。

しかし、これが可能動詞の「書ける」になると、下一段活用に転じ、「書けない(未然)」「書けます(連用)」「書ける(終止)」「書けるとき(連体)」「書ければ(仮定)」となります。可能動詞に命令形はありません。

さて、それでは「ら抜き言葉」の場合はどうでしょうか? たとえば「起きる」は上一段活用の動詞です。この動詞に「・・・できる」という可能の意味を持たせるのであれば、文法的には「起きられる」とするのが正しい用法です。語幹の「起き」に可能の意味の助動詞「られる」を接続させて、一つの文節を構成します。

そして助動詞「られる」は下一段活用で語形変化しますから、「起きられない(未然)」「起きられます(連用)」「起きられる(終止)」「起きられるとき(連体)」「起きられれば(仮定)」となります。

「食べる」のような下一段活用の動詞、「来る」=カ行変格活用の動詞も、同様に助動詞「られる」を接続させて、「食べられる」「来られる」とするのか一般的です。

これが唯一絶対の正しい語法であれば、問題は生じません。職場研修でたとえば、「渋滞がなかったので、会社まで無事に来れましたよ」などの「ら抜き言葉」を使った新人や若手社員に対し、上司や先輩が、「来られましたよ(「ら入り言葉」)と言え!」と注意すれば良いだけのことです。

しかし、ことはそのように単純ではありません。書き言葉はともかく、話し言葉における「ら入り言葉」の奨励には、下記のような問題が含まれています。

(1)文脈にもよるが、「ら入り言葉」を使用することで、かえって別の意味に受け取られてしまう恐れが生じる。たとえば「Aさんは保管した書類を調べられます」と言った場合、「受動」の意味に誤解されるかも知れないし、「B先生はタバコをやめられる」と言った場合、「尊敬」の意味に誤解されるかも知れない。

(2)地域にもよるが、可能の意味を表すには「ら抜き言葉」のほうが標準であり、「ら入り言葉」のほうがむしろ破格だとされてきた方言も少なくない。たとえば上の例を関西弁に当てはめると、「調べれる(可能)」「調べられる(受動)」「調べはる(尊敬)」になるであろうか? 少なくとも話し言葉に関しては、「ら抜き言葉」を標準語としない(1995年、国語審議会)からと言って、使用すること自体を批判するのは乱暴である。

(3)日本語の乱れを正すことは当然であるが、同時に言葉は時代によって移ろう「生きもの」であることも認識すべき。ある年代以降の世代で「ら抜き言葉」が多数派となりつつあるのであれば、それを踏まえた国語の標準化も、将来的には必要になるであろう。

このような事情ですから、話し言葉に関しては、単純に「ら入り言葉」のみが正しい語法だとは言えないのが現実なのです。

ただし、「ら抜き言葉」が標準語とされていない以上、書き言葉においては回避するべきでしょう。拙著『介護職の文章作成術』P.39には、「ら抜き言葉」を「誤り」とはしないまでも、「文章として格下げである」と述べておきました。公式な文書などでは特に気をつけたいものです。受け取った相手が守旧的な人物であれば、「ら抜き言葉」を目にして、書いた人(組織)の品格まで見下げてしまうことがないとも限りません。

たった一つの語句であっても、その言葉をめぐる状況、読み手の受け止め方まで思いを致して記述することが、「伝わる文章を書く」ことになるのです。

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