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2014年12月

2014年12月29日 (月)

初心に帰って

2014年もあと二日余りを残すのみとなった。

この時期になると、メディアでは「この一年を振り返る」企画が目白押しだ。またネット上でも、みなさんそれぞれが、個人史の中のこの一年を、さまざまな思いで振り返っておられることであろう。

私は、カトリック浜松教会に所属する信徒である。しかし、今年になって教会へ行った回数を数えると、神の母聖マリアの祝日(元日)、復活徹夜祭、聖母マリアの被昇天(8月15日)、クリスマスと、たった四回である。行けない事情は仕事や家事などに起因していて単純なものではないが、個人的にイエス‐キリストへの信仰が薄くなっているとは感じていない。毎日、主の祈りとアヴェ‐マリアとを唱えているし、困難に突き当たったとき、必ずキリストが手を差し伸べてくださると信じている。

しかし、カトリックは共同体を基盤に置く教会である。個人が神を信じ、キリストを信じるだけで十分だとはしていない。もし教会のミサで他の信者たちと交流する機会が乏しいのであれば、別の方法でそれを補わなければならない。私はMAF Hamamatsu(浜松外国人医療援助会)のメンバーであるから、その会合などで久保田君枝さん(MAF副会長)や山城ロベルトくん(MAF事務局長)など、何人かの信徒の方々と交流しているが、最近はこのボランティア団体のメイン企画が終了したことにより、会合もまれになっている。

そこで、私が活用しているのがFacebook(以下、FB)である。SNSを活用して共同体の友である方々と交流しながら、霊性を高めるべく努める。インターネットの最も望ましい使い方ではないだろうか。

昨年秋、FBにアカウント登録した直後、三人目か四人目かで友達申請をくださったのが、以前から交流があった橋本正士さんである。橋本さんは私より2~3年遅く徳島県で社会福祉士・ケアマネジャーを開業され、現在も居宅介護支援や成年後見を続け、筋を通した真摯な仕事のスタイルで、息の長い活動をされている。

その後は、だいぶ前にFBへ誘ってくださった埼玉県の浅川善弘さん(未対面。社会福祉士)や、前の所属教会でお付き合いがあった京都府在住の中村晴信さん(画家)ともFBでの交流が始まった。浅川さんは教会史に該博な方で、私が詳しくない部門についても的確な知見を分けてくださる方だ。中村さんの絵は人の心を和ませる風景画がおもなもので、氏の優しさがにじみ出ている作品が多い。

〔※追記;その後、浅川さんとは事情があってFB友達関係を解消している〕

そして、この一年、最も強いインパクトをいただいたのは、やはり丹後の稲岡錠二さんからであろう。稲岡さんに関しては、先に「無いからこそ、創る」のエントリーで詳しくご紹介したが、氏の活動力と友愛精神には脱帽するしかない。この厳しい時代の中で、私たちの行く手を照らす世の光と言うべきであり、業界仲間としてのみならず、信仰面でも良き模範とさせていただくに足る人物だ。稲岡さんとの出会いは、キリストに近い道を踏み外さないために私たちはどうあるべきか、との命題について、貴重な示唆を与えてくれた。

20141224christmas


自分が受洗したのは学生のときなので、すでに31年になる。あのときの感動を忘れないようにしたいと思う。

夏には音楽講師の後藤京子さん、そしてクリスマスには歌舞伎役者の市川澤路さん(未対面)とも、FBを通してつながることができた。偶然だが、お二人ともそれぞれ、新垣壬敏先生(私が洗礼を受けた東京の関口教会で聖歌隊を指導されていた)やそのご家族とお付き合いがあるとのこと。これも私に「初心に帰れ」という啓示なのだろうか。

中村さんもそうだが、文化・芸術系の方々との交流は、介護・福祉系とは別の視点から生活を省みる機会になり、良き学びとなっている。

また、稲岡さん、後藤さん、市川さんはラーメンで結ばれた同好の士でもある。いつか四人でラーメンを楽しみながら、信仰の分かち合いをする機会が来るかも知れない。

年の瀬に、信仰生活を振り返ってみた。

2014年12月21日 (日)

作る人、使う人

三年ほど前に、オリンパス‐メディカルシステムズ社の投資・買収をめぐる一大不祥事が明るみに出たとき、「しかし・・・たぶん、ツブれることはないだろうな」と思った。その理由は、同社の内視鏡が多くの医師にとって、手技的になじんで使いやすいものになっている以上、いまさら違和感を覚える他社の器械に変更する医療機関は少ないだろうと考えたからだ。

もちろん、一連の騒動に関しては風化させずに、同社に猛省してもらわなければならないが、同社が医師たちにとって「使いやすい」道具を長年にわたり開発してきた積み重ねは、評価されてしかるべきであろう。

器械(機械)=マシーンだけでなく、ロボットも同じである。いま、介護の省力化の主要アイテムとして、さまざまな機会に介護ロボットの活用が取り沙汰されているが、作る人と使う人とをマッチングさせる品物でなければ、社会にとって無用である。

望ましいマッチングのために必要なのは、お互いを理解すること、これに尽きる。

介護保険制度が始まる3年ほど前、まだ宮仕えだったころ、(旧)浜松市の在宅介護支援センター職員の集まりの場で、次年度の研修企画を考える協議が持たれた。以前から、福祉・介護職員にもテクノロジーの知識が必要だと考えていた私は、CADを皮切りに福祉・介護機器に関する工学的な学習を提案したのだが、取りまとめ役(仕切り役)であった二人から一蹴されてしまった。「知らないより知っておいたほうが良いって程度のものでしょ?」と・・・。

その後は介護保険に突入、介護とテクノロジーとの間に横たわる課題を顧みる暇も十分になかったのが現実だ。

今年になり、とある業界仲間とのつながりから、株式会社abaの代表取締役・宇井吉美さんと知り合う機会を得たので、12月9日、宇井さんの開発拠点がある千葉工科大学の津田沼キャンパスでお話を聞かせていただいた。宇井さんは同大学のOG(まだ卒業後何年も経っていないお若い方である)であり、今回は無理をお願いして、宇井さんの師である富山健教授からも、短い時間ながらご高見を伺うことができた。

宇井さんが介護に関心を持たれたのは、ご自身のご親族が介護を要する状態になられたことによる。そして、千葉工大で富山健教授という良き師を持つことができたことが、飛躍のきっかけになった。当初、「癒しのためのロボット」を作りたかった宇井さんに、富山教授が貴重な助言をくださった。

「人を癒すことができるのは人だ。ロボットではない」

富山研究室のメンバーの方々がめざす介護ロボットは、あくまでも「介護者支援ロボット」である。「開発する人は、基本的にロボットを作りたいので、作ることが楽しくなってしまい、それが現場にとってどんな意味を持つのかあまり深く考えない。1+1が2以上になって役立つものでなければならない(富山教授)」。

これを実践するために、富山教授はご自分の教え子である学生さんたちに、必ず現場で実習をさせる方針を採っておられる。

宇井さんも学生時代に介護現場へ実習に行ったところ、介護職員が利用者の排泄介助を自分側のペースに合わせて行っているのを目の当たりにして、衝撃を受けたという。現場のために何をしたらいいのかわからないまま、ロボット作りの仕事をすることは許されない、と認識を新たにされたとのこと。

そこで宇井さんは、利用者の身体のペースに合わせて、おむつを開かずに排泄を察知して介助を行うことができる方法はないものか、研究を開始し、大学三年生のとき、排泄検知機器の開発に成功される。紆余曲折を経ながらも、ビジネスコンテストに出品して受賞を重ね、四年生のとき株式会社abaを立ち上げ、前後して諸先輩から貴重な助言を受けることもできた。

一年半ほど前から、宇井さんは東京都文京区で飯塚裕久さんが経営する「ユアハウス弥生」でボランティアを始め(その後、初任者研修も受講され、現在は介護職員)、せっかく開発した排泄検知機器が、現場職員を誰一人納得させられないことに気付き、介護職員の動き方に合わせた改良が必要なことを痛感された。

このように、技術畑の論から現場との協働へと、望ましい方向にどんどん進んだ成果が、排泄検知機器「Lifilm」である。「におい」で検知し、記録してデータ集積までしてくれる優れものだ。介護職員が排泄を予知できることも多く、利用者一人ひとりに合わせた随時誘導も容易になる。

Lifilm

このLifilmの広がりは、現在、船橋市内にとどまっているが、来年は千葉県全体、さらに東京都へも販路を広げていく見込みである。

宇井さんが今後開発したいものは、一人の利用者のバイタルデータをすべて記録できるポータブル機器や、会話内容を即時文章化して相関関係を整理していく機器だとのお話があった。特に後者は、多忙な介護職員のプチ‐ケアカンファレンスに活用できたら良いなあ、と考えておられるとのこと。

「作る人」と「使う人」との連携は、今後の介護業界の大きな課題であろう。

「技術屋と介護職員とは言語が通じない。特に、介護職員はなかなか施設内の課題、問題点を赤裸々に語る場がないために、技術屋に向かって話すとき、ついつい話に熱が入り、さらに愚痴がそこに混ざって、結果的に偏った見方のインタビューになってしまうことがしばしばあります。ところが技術屋のほうは、その介護職員の話をスタンダードな介護職員の考えとして捉えてしまうから、ミスマッチが起きる。一緒に働かないと見えてこないものもあるのですから、互いに気の置けないところまで入り込んで場を共有する必要があるのではないでしょうか(宇井さん)」。

日本の介護を右肩上がりにしていくためには、私たち介護業界で働く人間の側に、大きな意識改革が求められているのかも知れない。

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