平将門に魅せられて
日本史上の英雄と言えば、皆さんはまず誰を思い浮かべるだろうか?
私は複数の何人かの名前を挙げる。もちろん、単に戦が強かった武将が英雄だというわけではない。民意に沿って民衆のために働いた人が英雄だと考えている。
古代史で一人選ぶとしたら、やはり平将門(?-940)であろう。下総国北西部を本拠地とする豪族であり、常陸国にも勢力を広げていた。朝廷を牛耳って荘園支配を広げる藤原氏一門と、そこから派遣される国司による収奪に抵抗、常陸国府を占領して在地地主による政権を樹立、いまの茨城県を独立国として、関東一円に勢力を及ぼした。しかし、武家政権をどう運営していくかのグランド‐デザインを欠いたまま、支配が空洞化、朝廷に協調する藤原秀郷や平貞盛らの襲撃を受け、建国三か月後に戦死して、政権は崩壊した。
時代が変わり、民意を代表する方法も異なるとは言え、既成勢力の人たちが自らの権益を守るために、社会保障が大きく後退させられているいまこそ、将門のような志を持った人物が求められているのではないだろうか?
そんな思いが強くなっていた時期に、昨年愛知県でお会いした、「いばらき福祉研究会(おもに県央地域を中心とした有志の業界団体)」会長の小林和広さんから、同会の総会記念講演で話をしてほしいとのご依頼をいただき、将門の国・茨城県まで足を延ばしてきた。
テーマは「口のきき方で介護を変える!」。利用者本位のために、介護・福祉職員の話し方はどうあるべきかとの内容であった。オーソドックスな技術論よりも興味深いテーマだったらしく、約100人の方々が聴講してくださった。単なる話し言葉だけにとどまらず、なるべく広い意味での、顧客である利用者や家族に対する心構えを説いたつもりである。あとで振り返ると、ややまとまりが悪かった部分もあったが、大枠で私が述べたい趣旨は、みなさんに理解していただけたかと思う。
また、同会では小著も多数ご購入くださったので、この場を借りて厚くお礼を申し上げたい。さらに、小林さんをはじめ有志の方々が、決して他人事ではなかった東日本大震災の被災地復興事業にも協力を続けておられるのには、頭が下がる思いである。
終了後の懇親会。小林さん(写真上・サングラス姿のマスターの右)をはじめ、同じく昨年お会いしているサ高住事業所長の桐原さん(写真下・左)、特養中間管理職の片岡さん(写真上・右端)、さらに、片道二時間もかけて群馬県から車で駆け付けてくださった、小規模多機能経営者の髙橋さん(写真上の女性)などを交え、日頃の疲れを癒す楽しい食事会となった。
翌日は水戸市内を散策。弘道館(写真)→水戸城大手門→彰考館跡と、藩政時代の史跡を巡る。水戸学の広がりが日本人のメンタリティに大きなインパクトを与え、今日まで少なからぬ影響を及ぼしていることから考えると、ある意味で水戸は「日本の中心地」と言えるのかも知れない。
また、彰考館跡には安積覚(かく。=澹泊。1656-1738)の像があった。同じく史館総裁であった佐々介三郎(=宗淳。1640-98)とともに、藩主・徳川光圀に近侍した人物。もちろん、この二人が格さん・助さんのモデルである。二人ともいまなら「学識経験者」であり、チャンバラが強かったわけではない。
お昼はご当地の「水戸藩ラーメン」を食べて、帰りの電車に乗った。
今回の茨城県行きは、自分の方向性を考える一つの機縁になったような気がする。小さな一人の人間に、何ほどのこともできないことは承知しているものの、それぞれの地方で地道な努力を続けている介護・福祉業界の人たちのためにお役に立つものであれば、たとえ小さな一石でも投じ続けたいと思った。
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