虚礼廃止は介護業界から
どの業界でも、お世話になっている人の親が亡くなった場合、当人を直接知っていなくても、葬儀に列席してごあいさつするのが、昔からの慣例になっているようだ。
しかし、喪主の役職などを考慮して義理で列席することについては、ずっと以前から疑問に感じていた。役員会でいつも同席しているからと言って、特別個人的に親しくしていたわけでもない人の親の葬儀に、わざわざ出向く必要があるのだろうか?
私もケアマネジャー職能団体の役職にある関係上、ときどきこのような葬儀の連絡を受けることがある。以前は職位上位の人の親が多かったため、故人を直接知らなくても、なるべく時間を割いて参列するようにしていた。
しかし、あるとき、やはり職位上位の人の親御さんが亡くなったとき、電話・FAX・メールとあらゆる方法で、喪主の人(またはその所属機関)からわざわざ連絡が来た。これでは列席を強要しているのと同じである。当人は地域の保健・医療・福祉業界の重鎮的な存在で、なるべく多くの人を呼ぶ必要があったのかも知れない。私もそこまでされると軽視できず、日曜日で、他に用事も入っていなかったので列席したものの、ほとんどは見知らぬ顔ばかりであった。
これを機会に、私は個人的に親しい人以外の親の葬儀には列席しないことにした。業界全体に虚礼廃止を浸透させていきたいと思い、他の役員にも勧め、その後は役員の親が亡くなっても、相役を理由に御霊前を出すのは原則やめることにした。同じ立場の人たちもおおむね理解してくれたようで、何とか当地ではこの方向が定着しそうだ。
介護業界に生きる人は、家計に余裕がある人ばかりではない。たとえば当地のケアマネジャー職能団体も、会費無料で自治体が給付適正化事業の一環として費用を拠出してくれているので、大部分のケアマネジャーが参加している。県のケアマネジャー職能団体は、年会費2,000円でやっと半数程度(推定)だ。個人的なお付き合いがないところの葬儀へ、儀礼的に参列するほどの余裕のない人も多い(私もその一人だが‥‥)。
この現状を考えれば、介護業界が率先して虚礼廃止を励行していってもおかしくないであろう。
葬祭は、親族の意思で地味に行うところも増えてきている。4月に他界された当地出身の山村睦氏(前・日本社会福祉士会会長)のご葬儀も、ご親族(ほとんどが福祉・介護関係者)の間だけで執り行われ、業界有志の間では、7日(東京)と14日(静岡)とで、偲ぶ会が持たれた。私は後者のほうに列席したが、故人と結びつきがあった百人ほどの人が交歓を深めることができ、心温まる集まりとなった。
こういう集まりには、これからもぜひ顔を出したいと思う。遺族の人たちも、葬儀に義理で参列してもらうより、よっぽど喜んでくれるのではないだろうか。
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昨日の静岡県社会福祉協議会主催、福祉職の
文章力向上講座、お疲れ様でございました(*^^*)
私は、高齢のお客様を対象とした仕事をしているのですが、
介護従事者ではない為、各機関で講座が開催されていても、
参加資格があるものがなく、はがゆい思いをしておりました。
今では、粟倉先生の著書で学んだり、ブログでも業界の
課題を教えてくださるので、大変勉強になっております。
いつもありがとうございます。
慶弔事は、どの業界でも関わり方が難しいですよね。
私が以前勤めていた業界では、例えば大手商社の
ご重役の葬儀ともなれば、商社内の各部門が競って
案内を出したりしていました。
本当に競っているので、他部門より少ないことが
分かると、追加案内を出すなど、もう大騒ぎ(;^ω^)
虚礼廃止は、足並みを揃えないと誤解を生む恐れが
ありますから、浸透させる行動をとられたということは、
大変意味のある事だと思います。
介護業界発展の為、重要な課題に取り組むには、
不要なことを整理していくのも大切なのですね(^_^)
投稿: 中山さと子 | 2015年6月17日 (水) 19時30分
中山さと子さん。
県社協の講座に来られていたんですか。
地域や業界での交際を上手にこなしていくのには、なかなか難しい部分があります。
これが正解、といったものもないと思いますが、周囲に気を遣い過ぎると、本当にやるべきことにエネルギーを割けなくなりますよね。
それは当人にとっても地域や業界にとっても、マイナスだと考えています。
自法人のPRよりも、利用者にしっかり向き合うことが大切ですから。
今後とも、ご意見をくださいますよう、よろしくお願いいたします。
投稿: じょあん | 2015年6月18日 (木) 07時55分
すみません。県社協の講座、私は参加して
おりません。私の説明がヘタクソでした(>_<)
(↑仕事でも活用させていただいてます )
介護職ではないので、こちらの講座は
私ではちょっと場違いかなと思いまして…
各機関で、様々な講座が催されてはいるのですが、
業界と直接的に関わっていないと、参加資格がなく、
興味があるのに出られなかったりで、はがゆいのです。
私は介護職ではありませんが、私の職業と介護業界は
関連性があり、課題も共通していると考えております。
県社協や市社協主催のものでしたら、
私にも参加資格がありますし、その他主催でも、
話し言葉の技術講座など、参加できそうなものが
あれば、ぜひ参加させていただきたいと思います。
粟倉先生の研修講師予定も、よくチェックしておりますので、
また機会がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: 中山さと子 | 2015年6月18日 (木) 11時15分