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2015年9月 7日 (月)

部分的介護就労

介護業界の人材不足が著しい。全国的に、人材どころか人員不足と言うべき状況に陥っており、各地で介護事業に携わる人たちの悲痛な声を、毎日のように耳にしている。

この状況をどうすれば打開できるのか?

介護サービスの外部評価事業を営む某社長が言う。「あなたたち、人材不足人材不足って言うけど、ダメなケアマネさんっていっぱいいるでしょ? そういう人が介護福祉士とか看護師とか、もとの仕事に戻れば、人材不足だって少しは解消されるんじゃないですか!」

厳しい言葉だが、その通りだとうなづける面は確かにある。ただし、それだけでは解決にならないことも現実である。

かと言って、東京都稲城市などで始められている、シニア世代のポイント制ボランティアにも、限界がある。何よりもボランティアとなると、事業所側にも相応の配慮が必要で、任せておけば良いものでもない。マッチングが悪いと、かえって事業所側の負担を増やしてしまう。その種のトラブルが、すでに起こっているかも知れない。

また、外国人労働者に安易に頼る考え方もいただけない。個人的には労働力の国際化(→グローバリゼーション)の流れは歓迎したいが、EPAに基づいて日本で就労したい外国人への門戸があまりにも狭い(英語圏の国々に比べると、言葉の壁も大きい)。他方で、外国人技能実習制度の業種拡大は、これまでの同制度の運用経緯から考えても、劣悪な介護労働環境を招く危険がある。私もこちらには反対である。

そこで私が提唱したいのが「部分的介護就労」だ。

20150907desk

と言っても、目新しい戦略を述べているのではない。すでに各地で前述の事態を憂慮する心ある人たちによって、いろいろと先駆的な実践がなされており、これは私がそれらを総称した造語に過ぎない。あるいは、すでに他の論者が適切な用語を使っておられるのかも知れない。ご存知の方はご一報いただければ幸いである。

極端に言えば、国民のすべてが、「人生の一時期に」もしくは「生活の一部分で」介護業界に就労するシステムを実現しようという考え方である。全国レベルでの制度化となると簡単にいくものではないが、地域に合った促進運動を展開して浸透させることは、それほど難しくないと思う。

奨学金をもらえれば介護現場を経験したい学生もいれば、自営業の傍ら介護の仕事を兼業したい社会人もいるだろう。形態はさまざまかも知れないが、みんなが「介護現場の実態を知る」ことによって、自分にできることは何か、そして、自分が変わることで日本の介護を変えられないか、考える機会になる。現場を「知る」人が増えることによって、一知半解の論者による介護に対するネガティブ‐キャンペーンを抑止する効果もある。

これについては、近々刊行される予定の拙著(書名未公開)でも、最終章の一部を割いて解説しておいた。

「部分的介護就労」。まずはあなたの身近な人たちに勧めてみませんか?

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コメント

粟倉先生、こんばんは(^_^)

部分的介護就労。分かりやすい名称だなと
思ったら、粟倉先生考案の造語なのですね。

私が感銘を受けたのは、端的な労働力として
だけでなく「 介護現場の実態を知る 」機会を
与えようとされている点です。

私は今35歳ですが、高齢化社会は、これから
私たち世代が確実に直面する、国家的な難題です。

解決策を考える為にも、それらを知る機会が、
より広く、身近に与えられたらいいですよね。

また私自身も、これから自分にできる事を
真剣に考え、実行していきたいと思います。

近々新たな著書を出されるのですね。
そちらも楽しみにいたしております。

中山さん、
いつも支持的なコメント、ありがとうございます。

近刊の著書は、一応、これまでの締めになります。
大げさに言えば、全国民に呼びかける本です。
マイナーな著者のものですから、あまり期待せずにお待ちください(笑)。

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