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2015年12月25日 (金)

「借り済ます」物語

むかしむかし、あるところに村があり、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは、おばあさんが編んで作った魔法の蓑笠を売り歩いて、生計を立てていました。

年の瀬も押し詰まって、あと八日ほどになったころ、おじいさんは年越しの前に荒稼ぎしておこうかいと思い立ちました。

「おばあさん、ちょっと町まで行ってくるよ。これから雪が結構降ってきそうだから、通行人の足元見て、笠を高値で売りつけるのには絶好のチャンスだからね(^◇^)」

「おじいさん、どうぞどうぞ行ってらっしゃい。でも雪男や雪女に笠を押し売りしないでくださいよ。殺されても保険が下りない決まりですからね」

「ほ~い、了解っ(^^)」

おじいさんは、魔法の笠を五つばかり携えて出かけました。街道まで歩いて行くと、師走の時期にふさわしく、町や村の人たちが目をシハスらせて行き交っています。みんな新しい年を迎える支度に忙しそうです。

そのまま進んでいくと、少し先のほうに、六人ばかりのスキンヘッドの集団が、サングラスを掛け、赤い革ジャンを着て、横一列に並んでいました。おじいさんはそれを見て凍り付いてしまいます。寒さで凍ったわけではありませんので念のため。

おじいさんは、その人たちが口々に呼びかけているのを聞きました。「貧しいガキどものために有り金置いてけ!(`д'メ)」。募金箱を持って、児童福祉のボランティア活動をしているのです。雪はさっきから降り続いているのですが、六人とも笠もかぶらずに、立ちっ放しで募金をしています。道を行き来する人たちは、あまりに恐ろしいので近寄らずに、わざわざ早足になって、避けて通って行きます。

立ち去りたくても凍り付いて動けないおじいさん。「しょうがない。何かしてやるしかないんだろうか・・・。そうだ! あの連中に笠をやることにしよう! 確かカタギを偽装して認定NPO取ってたんじゃなかったかな? だったら、寄付行為で控除してもらえるぞ! 税務署には笠の値段を一つ10万円ぐらいに吊り上げて申告しておけば、大助かりだわい・・・(^皿^)」

おじいさんはようやく身体を動かすと、ボランティアの六人のほうへ近寄って言いました。

「みなさん、慈善事業お疲れさまです。雪も降っていることだし、この笠を差し上げますから、ぜひ使ってください」。そして、一人ひとりのスキンヘッドに笠をかぶせてあげたのですが、かぶせ終わって笠が五つしかないことに気が付きました。おじいさんは再び凍り付きます。

「すみません! 五人分しかない! 誤認してました! でへ...f(^_^;)」とダジャレでごまかそうとしたのですが、悪いことに、最後の一人は六人組の親分でした(▼_▼メ)。親分の名前は「三太」と言います。三太親分はおじいさんの着物の襟をつかんで、

「ジジイ! わりゃぁ、ワシらをナメとんのか!」

「いえいえ、とんでもない! 親分さんの頭をナメてもショッパイだけですから・・・あっ、またスベっちゃったです! すみません、すみませんm(_ _)m m(_ _)m m(_ _)m なにとぞ命だけはお助けくだせえ! あっ! そうだ! 私がかぶっている笠で良ければ、どうぞお使いください!」と、自分の笠を頭から外して、三太親分の頭にかぶせてあげました。

魔法の笠の効き目はてきめんで、親分はとたんに機嫌を直し、つかんでいた襟を離してくれました。生きた心地がしなかったおじいさんも、ようやく救われた思いで、一目散に走って家まで帰りました。しかし、笠が無かったので頭から雪が降り積もってしまい、帰る途中でこんどはホントに凍り付きました。

帰りを待っていた、いや別に待っていなかったおばあさんの耳に、屋外で何かが倒れる物音が。「土手の方角から『ドテッ』という音がしたけど、何かあったのかねぇ(・・?」と外へ出ると、倒れ込んだおじいさんの変わり果てた姿が・・・

「しめた! これで私のほうが遺産もらえるわ!」と喜ぶおばあさんの声を聞いた途端に、凍り付いていたはずのおじいさんが突然スックと立ち上がって、「そうはさせないぞ!!! この因業ババアめ!」と激怒。

「まあまあ・・・おじいさん、冗談ですよ^^;」とおばあさん。とにかくおじいさんを介抱して家の中に入れて、暖炉で温めてあげました。これで一応仲直りということで。

さて、その晩のことです。

村人たちが寝静まったころ、おじいさんとおばあさんの家に、サッサッサッと何人かの足音が近づいてきたのです。

朝起きて、二人が外へ出てみると、六つの大きな紙袋の中に、袋ラーメンがいっぱい詰め込まれていました。紙袋の上に走り書きが・・・。

「ジジイ、きょうはよくもワシらに笠で魔法をかけてくれたな。さっそくお礼参りに来たぜ。魔法にかかって気分がマホーッとしてる間に、林〇木久〇に返品された袋ラーメンを、二食×一年分も押し付けられてしもうたやないか。これ、ジジイに全部片付けてもらわなあかん。オトシマエ付けろや!」

そして末尾に「黒須」と署名してありました。ぁ、書き忘れてましたが、三太親分の名字は「黒須」さんでした。

三太親分と五人の仲間たち、ホントはスキンヘッドが雪で冷たかったのを笠で守ってくれたおじいさんに感謝していたんですが、面と向かってお礼を言うのが照れくさかったんでしょうね。ま、とにかくラーメンで借りを済ませたんです。

おじいさんとおばあさんは、たいへんなラーメン好きだったので大喜び! 一年間、ラーメン三昧で過ごして、しっかりとスタミナを補給して、最後には同じ日に大往生しましたとさ。めでたし、めでたし*\(^o^)/*

うらやましがった村人たちは、これを「借り済ます、黒須三太」の説話として言い伝えました。そして、この話が西洋に伝わったときに、名字と名前の語順が逆になるなどして、「クリスマスのサンタクロース」になったということです。

これでおしまい!!!

(USO800認証済み)

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