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2016年7月

2016年7月31日 (日)

エンドユーザーの利益は?

「介護保険負担割合証」なるものがある。平成27年度改定により、「一定以上所得者」に該当する利用者が介護保険サービスを利用する際、従来の一割負担から二割負担に倍増となったため、一人ひとりの利用者について、負担割合が一割なのか二割なのかを表示する証のことである。

介護保険法施行規則や指定居宅介護サービス等の運営基準によれば、この証は利用者(被保険者)が介護保険サービスを利用する際、介護保険被保険者証(以下、保険証)と一緒に、介護保険サービス事業者事業者に提示し、事業者側もこれを確認することが定められている。ただし、どのように提示・確認するかの具体的な手段の細部までは定められていない。

そこで、制度上の介護支援専門員(≦ケアマネジャー)である私は、居宅介護支援(≦ケアマネジメント)の受任当初に利用者から個人情報提供の包括的同意をいただく際、保険証や負担割合証の情報を当該利用者が利用するサービスの事業者宛に伝達することも含めるものと説明し、かつ、その場面ごとに口頭または書面で説明して了解をいただいている。

具体的に、私は保険証や負担割合証を利用者から預って写しを自分で取り、それを給付管理の対象である介護サービス事業者宛にファクシミリで送付している。

もちろん、利用者や主介護者が、自分は介護保険法の規定通りにしたいと言って、自ら各事業者に保険証や負担割合証を提示してくださるのは全く構わない。規定通りにするのが本筋なのだから。ただ、実際にはほぼ全部の利用者が、私のやり方を承認してくださっている。

このやり方には、賛否両論があるだろう。賛成意見は、利用者や主介護者の手間を省くことを評価してくれるものである。

他方、反対意見は、本来介護保険認定情報も負担割合情報も、各事業者が利用者に確認すべきものであり、それを介護支援専門員が一括してファクシミリ送付するのは、過保護な対応であって、筋から言うと間違いだとの考え方である。もちろん私も、事業者側が「ケアマネからもらって当然」だとばかりに請求してくれば、本来各事業者が確認すべきものですよ、とたしなめた上で、送付している。

ここでポイントになるのは、医療保険との違いであろう。

医療保険の場合、公的な医療保険の種別も複数存在し、かつケアマネジャーに相当する職能が存在しない。したがって、患者が受診したおのおのの医療保険機関が医療保険の被保険者証を確認しないと、保険請求ができない。

これに対して、介護保険は(民間運営のものは別として、公的な介護保険は)全国で一本化されており、居宅介護支援の給付管理が発生する介護保険サービスに関しては、介護支援専門員が利用者の介護保険に関する情報を確認してから作成するケアプランに基づいてサービスを提供しなければならない(居宅療養管理指導のように給付管理の対象外であるサービスは、これに該当しない)。

したがって、介護支援専門員がまず利用者の保険証や負担割合証を確認して、正しい情報をサービス事業者に提供する義務がある。裏を返せば、介護支援専門員から正確な介護保険認定情報が提供されていれば、サービス事業者が改めて利用者に提示を求めて確認する作業は、余計なのである。二重の確認を求めている実態についてうがった見方をすれば、介護支援専門員に対する不信とも受け取れる(国が「不信のモデル」をベースに政策を変転させていることも現実である)。

介護保険サービスのエンドユーザーである利用者の余計な手間を省くことは、通常であれば奨励されるべき行為だ。もちろん、たとえ煩瑣であっても、国の法令や基準に背反することは、国民として許されない。しかし法令や基準に細部が明記されていない部分を、利用者の最大利益に沿って動くことは、担当する者の裁量範囲と考えるべきであろう。

浜松市では今年8月からの介護保険負担割合証が、7月23~25日に利用者の手元に届いた。私の場合、利用者によっては居宅介護支援を含めると4~5種類の事業者のサービスを利用している。8月上旬に開始されるすべてのサービスにおいて、利用前にこれを確認しなければならないとするのは現実離れした議論だ。通所や短期入所は初回利用日に確認するとしても、訪問系サービスはどうするのか? たとえば福祉用具専門相談員が上記期間に、先に負担割合証を預ってしまえば、こんどは利用者の手元に戻るまで介護支援専門員が確認できない事態も生じる。そのほうがよほど問題ではないか。

そもそも、これは各社のPCソフトすべてに共通するプラットフォームがあれば解決する話なのである。そのプラットフォームをどこの法人の担当者が閲覧(当然、パスワードなどの厳格な管理は必要だが...)しても、利用者の介護保険情報が取得できる仕組みである。介護支援専門員が一度入力すれば、各事業者は過誤などの訂正を求める場合を除き、画面を見るだけで仕事ができることになる。それがどこの社の介護保険請求ソフトにも共用されれば、たいへん便利になる。

かつて私が所属し、活動していた「独立・中立型介護支援専門員全国協議会」では、厚生労働省に対して、CSVファイルをベースとしたプラットフォーム構築を提案したことがある。法人を超えたインターコース‐システムにより、介護支援専門員による利用者囲い込みの減少につながる効果も期待したものだ。
(この提案は、富山総合福祉研究所で一人親方の介護支援専門員をされている塚本聡氏の発案に依拠するものである。その後、私と氏との見解の相違が拡大したことにより袂を分かつことになり、現在は音信不通になっているが、氏のオリジナリティを尊重し明記しておく)

しかし、これは現在に至っても実現していない。信頼筋からの情報によれば、大手IT会社同士の利害対立を調整できなかったことが原因だと聞いている。だとすれば、エンドユーザーの利益を損ねているのは、大手IT会社の姿勢に遠因があるとも言える。もちろん、それを調整すべき厚労省がコンバージェンスに及び腰だったのは、おそらくIT産業を管轄する経済産業省との絡みなど、複雑な事情があるのだろう。

いずれにせよ、利用者の利益を図るべく厚労省へは意見を届けているのだから、それを実践した私たちに対して、「システム改善のために何の提案もしていない(たとえばパブコメ一つ送ったことがない)」介護支援専門員が、利用者の利益に逆行する批判を展開するのは、的外れだと言えよう。

エンドユーザーは誰なのか? その最大利益を図るために、私たちには公益に反しない限りでの、現場におけるフレキシブルな対応が求められる。

2016年7月15日 (金)

人と会い、人と語り・・・(4)

自分の信仰がカトリックで、介護業界に身を置いている私としては、どうしてもこの二つのどちらかの属性を共有する人と同席することが多くなるのは、自然の勢いである。しかし、このところ少し状況が変化した。

4月24日に岐阜でお会いした伊東亜樹(つぐき)さんは、5年前に私が自費出版した『作文教室』の冊子をご購入くださった方だが、Facebookで(そもそも私のリクエスト押し間違いから)友達になってくださるまで、私の頭からお名前が全く欠落していた。正直に言うと、6年前に伊東さんは同じ法人の高齢者部門でお仕事をされており、冊子購入のときの振込通知にあったお名前の字面から、私のほうはてっきり女性のお名前だと勘違いしていた(汗)という、お粗末な話なのである。

いまは法人内で昇任されて、青少年のための児童養護施設で施設長をされている(お齢は三十代後半の)伊東さんと、岐阜でお会いすることになり、昼食は岐阜駅前の「麺や六三六(本拠地は神戸)」をご案内いただいた。煮干し・昆布・野菜が混じり合ったスープが実に美味しい!

20160424rokusanroku

ご勤務先の社会福祉法人愛燦会は、高齢者・障害者・児童の福祉各部門にわたる事業所を経営しており、木曽川をはさむ濃尾平野の東西、岐阜県から愛知県へとまたがっている。名古屋の郊外地域を巻き込む立地であるため、今後も各部門で利用者のニーズの増加や多様化が見込まれ、人材活用が急務になっている。

伊東さんからお聞きした話の中で注目されるのは、同法人の社会的役割と人材育成とをマッチングさせようとする試みである。一つはいわゆる18歳問題を解決するため、養護施設を巣立つ青年たちのうち希望者に、同法人内で就労するチャンスを提供しようというものだ。たとえ将来他業種へ転身するとしても、高齢者や障害者の事業所で働いた経験があれば、さまざまな形で役に立つのだから、私が提唱する「部分的介護就労」の考え方とも重なるものがある。

もう一つは、外国人研修生・技能実習生の活用である。この制度は拙著『これでいいのか?日本の介護』にも触れた通り、安価な労働力を確保するための方便に悪用されてしまっているので、私は旧来のまま運用されるのであれば廃止してほしい制度だと考えている。しかし伊東さんの法人では、むしろ研修生や技能実習生のために適正な労働環境を用意することで、将来的な介護労働力として活用する可能性を模索する方向である。この制度が介護分野にも適用されるのと同時に、抜本的な改善がなされることが条件になるとは言え、同法人の選択は一つの見識であろう。

「介護の場に人が欲しい」ことを先に考えてしまうと、壁にぶつかってしまう。逆に「働きたい人が不当な搾取を受けず、安心して労働できる場を用意する」ことから入るのは、いわば発想の転換である。一時的に苦しい場面があっても、同法人が長期計画で人材育成に取り組むのであれば、未来は明るい。伊東さんのような中間管理職の層が厚く、異部門同士の横の連携が円滑にできれば、それが可能になる。

私にとっても大いに学びになった対談であり、伊東さんには貴重な出会いにお礼を申し上げたい。

それから二か月余り。

7月3日には名古屋駅近くで、国内システム開発会社で仕事をされているシステムエンジニア、辻保行さんとラーメンをご一緒する機会を得た。辻さんは市川澤路さん(歌舞伎)のご友人であり、ラー友の団体(名称は開示できないが、あの「関西アホ仲間」の親団体になる^^;)を通して知り合った方だ。私も昔、短期間であるが千種区に住んだことがあり、中村区には母の実家もあるので、地下鉄東山線つながりでFacebook友達になっていただいた。

昼食は名駅から少し西へ歩いた「にぼしらーめん88」。ここは濃厚魚介とんこつ系の煮干しスープで、六三六とは違った旨味が何とも言えない。また来たい味である。

20160703niboshi88

辻さん(四十代前半)は金沢のご出身で、名古屋には過去に一度、今回は数年前から赴任されている。本当のラーメン通で、他にも東山線沿線のラー店をいくつか紹介してくださった。私もこんど名古屋へ行ったときには、順番に食べ歩こうと目論んでいる。

さて、異業種の方と語ることは、私たちの業界の常識を見直す機会にもなる。辻さんはご自身のお仕事について気さくに話してくださったが、具体的な仕事内容を語るときには決して顧客を特定されるような表現をされず、逆に顧客を推定される語りのときには決して具体的に立ち入った仕事内容には言及されなかった。

セキュリティに関わるお仕事なのだから、守秘義務が厳格なのは当然であるが、本来、どの業界でもそうあるべきなのだ。しかし残念ながら、介護従事者の口の軽さはこれと対照的な、嘆かわしいレベルなのである(これも拙著で触れた)。

また、辻さんは顧客から急な要請があれば、夜間でも駆け付けなければならない。しかるべき技術を持った方が、そのようなハードな時間配分の仕事をされるのだから、当然対価もそれに見合ったものとなる。私たちの業界で、夜間緊急対応の訪問看護師の報酬が高く、日中の決められた勤務だけの介護職員が低報酬なのも、こう考えると納得できるであろう(もちろん、いまの水準のままで良いと言っているのではないが)。辻さんご自身も、オーバーワークや部下のトラブルへの対応などが影響するのか、ときどき体調を崩されると聞いている。

人気の業種・職種は、積み上げられた技術・知見に基づいて確実な仕事をこなす職能や、決して楽ではない労働環境と表裏一体なのだ。介護業界の職員も、他業種の厳しさを覗いてみることは大いに必要であろう。

このたびは異なる業界の視点から、職業人のあり方についてのご教示をいただく得難い機会となった。辻さんには感謝の念を表させていただく。

最近は、私自身が遠方へ出向く機会が著しく減っているので、このような形で機会を捉えて、近県の人たちと交流を深めることが大切だと考えている。

自分だけの殻に閉じ籠っていては、何も生まれない。また、ネットでのやりとりはどうしても限界がある。現実に人と会って、人と語ることで、その人柄に触れ、自分自身の糧にすること、換言すれば生涯学習の一場面とさせてもらうことを、私は志向したい。

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