「忘れ去られる権利」を乱用するな!
ICT技術の飛躍的な発展により、インターネットは私たちにとって身近なものとなったため、社会は大幅に利便性を増した。
そして、逆に私たちにとって不便、不具合なことも起こってきた。
ずっと昔の犯罪歴や愚行歴がネットにさらされてしまうのも、その一つである。昨年、閣僚を務めた北陸出身の政治家をめぐって、過去の愚行が話題となったが、職業や知名度にかかわらず、誰の前歴を誰でも調べることができる世の中なのだから、「前歴」をめぐるさまざまなトラブルが頻発している。
そして、前歴を「忘れ去られる権利」についての訴訟まで起こされる時代となった。ネットの検索エンジンに犯罪や愚行の前歴がさらされてしまっている人が、すでにその類のこととは縁を切って平穏に仕事をしている場合、「〇十年前にこんなことが・・・」といった手かせ足かせに縛られたくないのは、人の情として自然である。その犯罪や愚行の社会的影響の重大性にもよるだろうが、「いい加減にしてほしい」と、検索エンジンからの消去を求めるのは、決して身勝手な行為だとは思わない。
また、自分と反対意見である人の不利を図るべく、現在の活動とは関係の無い、あるいは関係の薄い昔の事実を「ほじくり出して」、その人を叩く人間が増えているのも事実だ。もちろん、これは褒められない行為である。暴露される側にとっては迷惑千万であろう。
しかし、その犯罪や愚行をいわば「踏み台」にして、現在の地位を築いている場合は、話が別ではないか。
私は20代、介護職員として宮仕えしていたころ、当時の利用者に対して、今日のスケールで見れば間違いなく「アビューズ(≧虐待)」に相当する行為を何度もしていた。自著では「恥ずかしい行為」とだけ記載してボカしているが、講義などで関係する話題に触れる際には、過去に自分が、「虐待に相当する」劣悪介護をしていた事実や、それに対する「申し訳なかった」との反省があってこそ、いまの自分があることも、包み隠さずに述べている。
当然のことだ。マイナーであっても、「介護」の分野で論陣を張る以上、過去の過ちは避けて通れない。昔の私を知っている人から「お前がエラそうに何を言っているんだ?」と嘲笑されないためにも、話題がそこに及んだ際には、ためらわずに告白するようにしている。
したがって、地位や知名度の高い人が、「クサいものにはフタ」をしているとしたら、これは看過できない。その一例を掲げよう。
当県では名が知られたヘイワ活動家(護憲派)Aさんがいる。環境保護でも活躍した人であり、県内各地で講演をして回っている人物だ。お住まいの市や性別を挙げると特定されてしまうので、伏せておこう。
このAさんが過去、大麻常習者の人たちと一緒にヘイワ活動や環境保護活動をしていた事実は、意外と知られていない。と言うか、ご本人がそれについて全く語っていないし、Aさんに近い人は何人か知っているが、その人たちからもAさんと大麻の関係話が出てきた形跡がない。Aさんの話を聞いて「感銘した」人のブログなどを見ていても大麻の話は出てこないし、検索エンジンからも全くあぶり出せない。
その大麻関係の人たちがいまどうなっているか、私は消息を聞かない。しかし、あくまでも私の主観に過ぎないとは言え、どう過小に見積もっても、Aさんがこの大麻関係のネットワークを「活用」して活動の場を広げていったのは現実である。つまり、Aさんの活動歴は、大麻常習者の人たちを「踏み台」にしていると考えられるのだが、Aさんはこの前歴をキレイにリセットしてしまい、自分の活動の「光」の部分だけを滔々と述べて、聴衆の喝采を受けている(と聞いている)。
このAさんは「真の住民運動と似て非なる「プロ市民」の運動」に登場した人物とも密接な関係にある。二人は「同志」と表現して良いかも知れない。その「プロ市民」がどんな人物だったかは、エントリーを参照いただきたいが、何となく似ているように感じるのは、私だけだろうか。
私は個人的には防衛力強化論者なので、護憲(9条)論者のAさんの話を聞きに行くことはないだろうが、もし私が護憲論者であっても、Aさんがこの姿勢を変えない限り、私は信用できない。当然である。私自身がAさんの活動に協力しても、何かキズが付けば、切り捨てられる可能性が強いのだから。
「忘れ去られる権利」を行使するのは良いが、乱用してはならない。これは一人ひとりの品性の問題なのかも知れないが、乱用することは心ある人たちからの信用を失うことになることを、地位や知名度の高い人たちは肝に銘じるべきであろう。
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