自治体附属機関等の委員会に出席して(2)
公的な会議に出席しての感想。
二回目は、地域の距離感覚の話である。
合併後の浜松市は、日本全国の基礎自治体で二番目(一位は岐阜県高山市)に、政令市に限れば一番広い。その面積は、日本の都道府県で最も狭い香川県(1,876㎢)に近い広さ(1,558㎢)であり、香川県を少しスリムにして向きを変えると浜松市の形になるようなイメージである(下の画像は浜松市公式HP所掲)。
さて、市の本庁では、その距離感をどの程度理解しているのだろうか? いくつかの会議に出てみた限りでは、はなはだ心もとない。
たとえば、在宅医療連携支援センターが中区に開設される、あるいは、医療と介護の連携に関する企画が市の福祉交流センターで開催される。その場所へ天竜区の水窪や佐久間から出向くとなると、道路の混み具合にもよるが、二時間は見ておいたほうが良い。先に掲げた香川県の例で言えば、西端の観音寺市から県都の高松市中心部へ行くぐらいの感覚だろうか。
一つの市の中でも、移動するのにこれだけの距離があり、時間がかかる。会議・研修・イベントなど、すべて「中心部」で開催されるものに対して、「周縁部(語弊はあるが、一応この言葉を使う)」の関係者はどのような眼で眺めているのだろうか。そのあたりを的確に把握した上で、関係者は周縁部の住民からも身近に感じられる施策の展開に勤しまないと、効果的な企画が推進できない。
静岡県の会議にしても同じことだ。旧国名では「遠江」「駿河」「伊豆」の三か国が当県に相当する。しかし、県都の静岡市の中心市街地で午前10時に会議や研修がある場合、浜松の水窪や佐久間からは、車で行くとしても朝7時には出発しないと確実に到着できないであろう。交通費の支給は公共の交通機関が原則だと言われて、真面目に電車を使えば、朝6時ころの飯田線でいったん愛知県の豊橋まで出て、そこから新幹線で向かわないと間に合わない。伊豆半島の南端から静岡市へ行く場合も、似たり寄ったりではないかと推察する。
だからこそ、より身近な単位として県内8つの「圏域」なるものがあり、その圏域の中で何をしていくべきなのか、時間をかけて議論を熟成させることが必要になる。ところがこの「圏域」単位の会議には多くの団体の代表者が顔を合わせるので、限られた時間の中では、往々にしてそれぞれ形式的に意見を開陳するだけの場になってしまい、実質的な施策に関する討議がほとんどなされないまま、最終的には県当局任せになってしまう場合が多い。
そして、現実にどの部分にいくらお金が使われるかは、会議の中で出た要望などとはあまり関係なく、県当局と関連する団体や勢力の駆け引きで決められていくことが多いのだ。せいぜい会議で出た話の中から、施策の具体的な中身に多少反映されるポイントがある程度である。地方の現場でがんばっている人たちから見れば、「結局、よくわからないうちに県の中央で決められてしまうんでしょ?」ということになる。周縁部の市民団体や専門職団体の代表格の人たちだけは、そこに多少参画しているが、その他大勢にとっては遠い向こうの話であるかのような状況になっている。
それと同様な感覚で、県都で何か県民啓発のためのイベントが開催されても、周縁部に住むほとんどの人たちにとって、わざわざ出かけようとする気には全くならないことが多いのだ。
これではいけない。浜松市にしても静岡県にしても、境域の隅々まで浜松市であり、静岡県である。行政に携わる人たちが周縁部の距離感を常に意識して仕事をし、業界団体や職能団体も、すべての境域を代表している意識を持って意見を発出しないと、市勢、県勢全体に悪影響が広がってしまう恐れがある。
浜松市介護支援専門員連絡協議会では、今回の役員改選において、天竜区の北部、長野県と境界を接する地帯を管轄している地域包括支援センターの管理者を、副会長の一人に選出した。大合併以降、諸事情で実現しなかった最北端からの三役選出である。これを機会に、周縁部で働くケアマネジャーや介護業界職員の実態をより重点的に把握することができ、困難にさらされている地域の課題解決の一助にしていくことができれば、それに越したことはない。
いかに交通が発達し、ICTによる情報網が発達しても、縮められない物理的な距離感覚について、私たちは決して軽視してはならないであろう。
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