懇親の酒席で求められる節度
昨秋の開業15周年のつどいには、地元浜松はもちろん、全国各地から実に多くの方々にご来場いただき、感激ひとしおであった。
しかし、私が地元でお世話になった関係者のうち、何人かを最初から意図的に招かなかったことは、フェイスブックの「友達」ぐらいしかご存知なかったと思う。
なぜその人たちを「外した」のか? 答えは簡単である。
その人たちは、いつも懇親の酒席で20分、30分と自分の話を長々続けて、他の参加者がなかなか口をはさめない状態を作ってしまうからなのだ(コミュニケーション障害や構音の障害等により、20分、30分かけないと話をまとめられない人とは、全く異なる)。
この該当者数名は、私と同世代からかなり上の世代にわたる人たちである。個人が特定されないように表現するが、そのうちお二人は国際交流にも大きく貢献し、相手国の(当時の)最高政治指導者と会っている人物だ。だが、それほどの人であっても、私から見る限り、自分が主催する懇親の場に出ていただくには不適格なのである。
全国各地から多くの仲間たちが、研修会や懇親会の参加費に加えて、交通費も自己負担して集まって来られている。主催する側としては、懇親会を全員にとって有意義な交流の場にしていただくように努力するのが責務だ。
場を選ばず自慢話の独演会をやってしまう人は、もちろん悪意はないだろうが、この趣旨に沿わない人である。いかに地位の高い人であろうが、懇親の酒席では「節度をわきまえない人」だと言わざるを得ない。私の業界仲間たちは、その人の話を聞くために貴重なお金と時間を使って、遠路参加しているのではない。延々とした長話は(その分野に関心のある一部の人を除き)他の参加者にとって聞き苦しいだけであろう。自分の独演会をやりたければ、自分で企画して人を呼べば良い。
これまで当たり前のように、日の当たる場所でばかり自分の業績を披露してきた人が、ある意味でナルシストになってしまい、行く先々でこのような行為を繰り返すのは、悲しいことである。そこで自己変容できる人ならば本当に尊敬するのだが、なかなかそうならないのが人間の性(さが)なのかも知れない。
しかし、呼んでしまってから、その人が長話をしたからと言ってスピーチロックをするのは、かえって気分を害する可能性が強い。そこで、最初から招かないことにした次第だ。
その人たちを「外した」結果、昨秋の「つどい」の懇親会では、各テーブルでおおむね「独演会」の弊害を避けられた。もちろん他地から来られた方の性格までは把握できないので、一部、長話をしていた人がおられたかも知れない。それでも会場の良い雰囲気を大きく損ねるほどのことは起こらなかったと記憶している。参加された方々の節度と良識とには、改めて敬意と感謝の意とを表したい。
ところで、独演会の話とは異なるが、以前に見たこんな光景を思い出した。
何年も前の静岡県社会福祉士会総会後の懇親会。講演の講師として他県から呼ばれた人も参加して、懇親会終了まで付き合ってくれた。私は講師の講演テーマにさほど興味がなかったが、若手や中堅の会員の中には、その分野に大きな関心を示した人が多くいた様子で、講演の最後には質疑応答も交わされていた。そして懇親会は立食パーティーであり、参加者は移動しながらいろいろな人と歓談できるパターンだったので、普通なら多くの会員が講師と話す機会を持てたはずだ。
ところが、同会の理事であった一人の中堅会員が、講師に次から次へと話しかけて、懇親会の大半の時間、その講師を「独占」してしまい、他の会員が寄りつけなかったのである。私はほとんど講師の隣のテーブルに居て、行き交う周囲の人たちと談話していた時間が長かったので、たまたま記憶に残ったのだが、開始一時間半後の終わり近くになってもその理事が講師とずっと話しているのを見て、「まだやってんのかい!」と苦笑したものだ。その理事に苦言を呈するほどの間柄ではなかったので、傍観していたのだが。
県社会福祉士会の理事も無償労働の部分が少なくないだろうし、このような機会にいわば「役得」で優先的に来賓と語る機会を持つことはあって良いだろう。しかし、他の会員が割って入る余地がないような「独占」は異常だ。講師の側も、より多くの会員たちと交流したかったであろうに、一人の会員から延々と議論を吹っ掛けられていたのだから、外面はともかく、内心では決して快く思わなかったのではないだろうか。もし私がこの講師だったら、途中で「○○さん、悪いけどノーサンキュー」とか言って、テーブルを移動したであろう。
これもまた節度をわきまえない好例である。
懇親の酒席では、参加した全員がなるべく高い満足感を得て、交流の果実を持ち帰ることができることが望ましい。そのために、私が席主になるパーティーでは、たとえ一部の方から嫌われようが(笑)、節度をわきまえた人たちだけをお招きする姿勢を貫こうと思っている。
私と飲んだことのある知人・友人のみなさん。どうぞ酒席の節度を守って、これからも私が快くお声掛けできる方でいてください!
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