« 講師の品格 | トップページ | お薦めのステーキ専門店 »

2017年9月15日 (金)

「敵」だからこそ必要な窓口

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)危機が、深刻さを増している。

米国は北朝鮮の挑発的行動に強い制裁を加える態度で臨み、日本もこれに同調している。これに対して、北朝鮮側は一層反発して、ミサイルや核兵器の開発をさらに推進している。

多くの日本国民から見れば、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発は一方的な暴挙である。しかし立場を入れ替えれば、米国や韓国と休戦状態-いまだ戦争中-である同国に取って「当然の自衛措置」以外の何物でもないことも、また現実である。同国からはリビア(2011年、旧ガッザーフィ政権破滅)の例が引き合いに出されるが、むしろ私はウクライナ(2014年、クリミア半島喪失)の例のほうが北朝鮮指導部の核兵器開発への意思を加速させたと考えている。

ウクライナが旧ソ連から継承した核兵器を放棄してロシアへ移管した際に、ロシアに加え米国・英国が参加してウクライナの領土保全を約したにもかかわらず、親ロシア派による一方的な住民投票の形で、クリミア半島をロシアに奪われているのだ。もしウクライナが核兵器を保有していたら、展開は異なっていたとの思いは、北朝鮮指導部のみならず、世界の多くの人に共通するものであろう。したがって、米国側が「北朝鮮が核兵器を放棄すれば政権存続を保障する」との言明をしたとしても、北朝鮮側からは信用できないのは自明の理なのだ。

私は読者がご存知のように、防衛力強化論者である。明確な形でなくても、日本を事実上の敵国と見なして恫喝を続ける国に対しては、同盟国と連携しつつ、自らも着々と防衛能力を強化して、相手国から攻撃されにくい状況を作ることが必要だとの考えである。

しかし、それは「対話の窓口を閉ざしても良い」ことと同じではない。むしろ逆だ。味方ならば窓口はいくらでも作れる。「敵」だからこそ、対話の窓口をどこかに開いておくことが必要なのだ。特に北朝鮮危機は米国・韓国と防衛上の歩調を合わせることが求められるが、その中でも、日本として独自外交を展開できるための仕掛けはしておかなければならない。そうしないと、全面的な同盟国との一蓮托生になりかねない。

独自外交の余地を残しておくことは、決して同盟国に対する裏切りではない。むしろ状況によっては、同盟を補強する役割を発揮することもある。偶発的な事態が起こっても相手国側の真意を確認する術がなければ、かえって深刻な状況を招く恐れもあるのだから、パイプを残しておくことは必須であろう。

現在の政府与党が北朝鮮との間にどの程度の広さの窓口を持っているのか、判然としない。おそらく何らかのパイプはつながっていると推測されるが、自民党内の右派勢力が強くなれば、パイプは細く頼りなくなるかも知れない。

東京新聞の望月衣塑子記者が政府の記者会見の場で、「北朝鮮の要求に応えるような働きかけを米国・韓国に対してやっているか?」と質問したことは、右派(特にネット民)から一斉攻撃されているようだが、政権与党が独自外交をする用意があるのかを質す意味では、鋭い視点だったと思う(ただし、同記者は被選議員でもないのに私見・憶測を述べて記者の本分を逸脱したり、限られた質問時間を独占したりと、他の問題があるので、基本的に氏のスタンスを私は支持しない)。菅官房長官は「北朝鮮に聞いてくれ」とはぐらかしたようだが...

この後、アントニオ猪木議員が訪朝して、北朝鮮の複数の幹部と対談したことは、対話するパイプを維持しておくためには大きな意味のあることだ。少なくとも北朝鮮側からは、日本側に対し窓口を開いていることを示したことになる。猪木氏が構想している議員団の訪朝が果たして現実的なのかは何とも言えないが、氏の見解「日本側が窓口を閉ざしているのでは」は正鵠を射た指摘である。猪木氏を北朝鮮の傀儡だと非難する見解は、全くの的外れであろう。

その窓口を北朝鮮側が有利に使おうとしたら、日本側は毅然として自国の主張をコンフロントすれば良い。国内の「親北勢力」に配慮する必要はない。テーブルに示した相互の主張が本当に折り合えない内容であったら、平行線をたどるのはやむを得ないが、テーブルそのものを壊してしまってはいけない。

今回の危機は、総理をはじめ閣僚、関係議員、官僚の人たちも難所だとは思うが、何と言っても全国民の生命がかかっているのである。高度な政治的判断を誤らず、主権国家日本に取って最善の道を賢明に選択してほしいと願う。

« 講師の品格 | トップページ | お薦めのステーキ専門店 »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 講師の品格 | トップページ | お薦めのステーキ専門店 »

フォト
無料ブログはココログ
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

他のアカウント