ケアマネジャーは「恩知らず」「義理知らず」になれ!
私が一切の介護事業所や医療機関と併設・提携しない、一人親方のケアマネジャーとして開業してから17年半。もとは「囲い込み反対」の動機から、この営業形態を採ったのだが、ときどき次のような誤解を受けることがある(過去、複数の関係者から直接・間接に寄せられた)。
それは、「いくら独立型だと言っても、親しい事業所、近い関係にある事業所は存在するだろうから、それらの事業所に利用者さんを紹介する率は高いんでしょ? だったら偏っていることに変わりはないのでは?」との疑問だ。
まず、人が主観を持っている以上、たとえば剛体のような、絶対的な公正中立は存在しない。いくら努力しても、なにがしかの偏りが発生することは免れない。利用者のニーズに対して数ある選択肢の中から、最適ではないところを選択することが、ときどき起こり得るのは現実だ。そうこうしているうちに気が付いてみれば、決して意図的ではないにせよ、結果として特定の事業所に紹介率が偏ってしまう可能性は存在する。
しかし、その偏りが、昵懇な事業所、あるいは利害関係が共通する事業所に対する偏りなのかどうかは、また別の問題である。
そもそも、私の場合は、親しい事業所や近い関係にある事業所を優先して利用者さんに紹介することは決してない。むしろ、私は結構「恩知らず」「義理知らず」の部類に入る人間なのだ。
たとえば、
・訪問介護を利用したくて介護者が訪問介護事業所に連絡を取ったので、その事業所は私に居宅介護支援を依頼してきたのだが、その紹介元に対し、「お宅ではこの方のご要望に対応するのが難しいと思いますので...」と言って断り、別の事業所を位置付けた。
・通院先医療機関から利用者さんの紹介。介護者からはそこの訪問リハビリを利用したい話があったので、まずは主治医の指示であるから訪問リハビリを開始。しかし、何か月もしないうちに、利用者さんの状態がかなり変化したので、ご本人や介護者に助言して、医療機関ごと利用を終了。他の医療機関と、また別法人の訪問看護とに切り替えてしまった。
・住宅改修を希望する介護者さんが、過去お付き合いのあった工務店や建築設計事務所の名前を二、三羅列。ところが、その中に私の親戚筋が経営する事業所が含まれていたので、速攻で介護者さんに対して「ダメ出し」! その理由は、およそバリアフリーからはほど遠い(他の面ではとても優良なのだが...)仕事をする人であることがわかっていたから。
これが私のスタイルである。当の利用者さんの紹介元や、身内でさえ(言葉は悪いが)「蹴飛ばす」ことをしているのだ。同様なやり方で、利用者さんのニーズに合わない事業者さんを断ったり変更したり、数え切れないほど事例を重ねてきた。
おそらく、多くのケアマネジャーが躊躇する行動だとは思う。しかし、だからと言って、必要なことを理解していながら断行しないのであれば、それはケアマネジャーの職業倫理に鑑みて、大きな問題である。
もとより、相手方が良識をわきまえた事業者であるのなら、礼を尽くして断れば、趣旨を理解してくれるものである。一方的にサービス提供を断って相手の担当者を立腹させることがないように、事情を説明して了解を求める努力は必要だ。それもまたケアマネジャーの専門性であるはず。ミスマッチを回避するためのアクションであれば、長期的には相手方の利益にもなろう。ならば、お互いにとって「win-win」にほかならないのではないか。
その証拠に、私が「蹴飛ばした(笑)」いくつかの事業所は、その後も私に利用者さんを紹介してくれている。ありがたいことだ。
もちろん、このあたりは地域性や事業所のスタンス、経営者の考え方など、いくつかの問題も関係するだろう。一回のアクションがお互いの関係を悪くしてしまい、修復が困難になる可能性もある。しかし、それを恐れていては、ケアマネジャーがすべき仕事は成り立たない。
独立開業でなく、併設型であっても同様だ。自法人や自事業所と親しい事業所、近い関係にある事業所に対しても、偏らない姿勢が求められる。上司や先輩からの圧力があっても、跳ね返すだけの専門性を備えたいものだ。
ケアマネジャーのみなさん! 自分の信念で「恩知らず」「義理知らず」になろうではないか。
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