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2019年5月 7日 (火)

「沖縄独立」は現実的か?

先月、沖縄に駐在する米軍海兵隊の兵士が、別れ話のもつれで、元交際相手の女性(北谷町)を殺害して自殺する事件が起こった。

経過はともあれ、自分のエゴのためにこのような殺人をしでかすのは、ストーカー殺人と変わりなく、たとえ自らも死を選んだとしても、許されない行為だ。まだまだ人生を楽しめたはずなのに、犠牲になって命を落とした女性には、心から哀悼の意を表したい。

さて、この種の事件が起こるたびに、一部の沖縄県民から唱えられるのが、「独立論」である。

ただでさえ、米軍普天間基地の辺野古移設をめぐって、国と沖縄県との反目が深刻になっている。それに加えて、上記のような米軍人や軍属による悪行が頻繁に発生する(なぜか、米軍側による地元への貢献は語られることが著しく少ないが、ま、それはひとまず措くとして...)。それならば、むかし沖縄は独立した「琉球王国」だったのだから、その時代に戻って、日本にも米国にも制約されなくなるのがいちばん良い、と考える人たちが増えるのは、時の勢いかも知れない。

もちろん、どんな政治的な見解を持とうが、一人ひとりの市民の自由である。これには全く異論はない。もし沖縄県で「独立」を支持する県民が多数を占め、日本国政府との穏当な交渉の結果、本当に一つの主権国家としての独立が実現すれば、スコットランド(英国)やカタルーニャ(スペイン)の独立運動と同様、日本国民として認めないわけにはいかないだろう。

しかし、ここで独立論者の人々にお願いしたいことがある。

以下に示す内容について、冷静に考えていただきたいのだ。

以前のエントリーで紹介した地図では、鄧小平政権時代の中国が、どこまでを自国領になる可能性がある地域(正確に言えば、領有権を再議すべき地域)だと考えていたかを示した。これ以降、江沢民政権も、胡錦濤政権も、そして現在の習近平政権も、この主張を明確に取り下げたことは一度もない。以下にその地図を再掲しておこう。

20140704chizu 

また、ジャーナリスト松本利秋氏の論考にあるように、海洋進出の障害を取り除きたい中国側から、地政学的に判断した場合、この地域全体が自国領となった場合の利益は大きなものがある。日本中心、沖縄中心ではなく、あくまでも中国を中心としたらどう見えるか? それが重要だ。

この事実を踏まえる限り、沖縄が独立した場合、中国が侵攻してくる可能性は大いにある。では、「独立沖縄国」はどうするのか?

米軍や日本の自衛隊を追い出してしまえば、両国の軍は沖縄を守らない。そして国連軍も出動しない。安保理で議決しようとしても、中国は当然のように拒否権を行使する。人民解放軍が攻めてきた場合、どこの国が沖縄を守るために出動してくれるのか?

自前で領土を守るのであれば、北朝鮮のように徹底的な「先軍政治」の方針を定め、他の用途はそっちのけにして、国費の大半で軍備を整えるのか? いや、それでも巨大な中国には歯が立たないので、急遽核兵器の開発を進め、抑止力として核武装をするのか?

おそらく、独立論者たちにとって、この道は全くの想定外であろう。「平和的に中国と共存する」ことが前提であるに違いない。中世の明王朝の時代には、それが成り立っていたではないか! と。

その場合、課題は三つある。

一つ目は、中世には「海」が障壁になっていたことだ。薩摩藩は島伝いに侵攻して琉球王国を服属させたが、反対側から来ると当時は未開地だった台湾から先島諸島、さらにそこから海を越えて出兵しなければならなかった。宣徳帝が没した(1435)後、内陸的で海に関心をあまり持たなくなった明側からは、面倒な征服事業に手を出す動機には乏しかった。

現代は全く情勢が異なる。中国は周辺諸国を圧して海洋進出を強めており、その海軍力は、沖縄へ侵攻するのに余りある力を有している。海は全く障壁にならないと考えてよい。

独立論者たちは、海に代わる障壁として何を想定しているのだろうか?

二つ目は、中世の琉球王国に対する、明王朝からの位置付けである。尚真王以降の琉球は、自らは「平和国家」でありながら、明に対して馬と硫黄とをおもな輸出品としていた。当然ながら内陸国家になった明王朝としては、この両品は周辺の異民族と戦うための必需品であった。

つまり、「平和国家」琉球王国は「軍需産業」で栄えていたのである。

したがって、「独立沖縄国」が中国からの侵攻を平和的に防止することを考えているのであれば、大々的に軍需産業を振興し、最新鋭の兵器を次々と開発して、人民解放軍のための供給基地となるのが望ましい。と言うより、中世の「平和国家」琉球を再現するとは、結局そういうことなのだ。中国にとって「独立沖縄国」が自国のため最大限の利益を引き出せる存在として位置付けられるのであれば、あえて国際世論に反してまで侵攻はして来ない可能性が強い。

独立論者たちは、郷土が(たとえば、米国ユダヤ系資本などの軍産複合体のような)軍需産業で存立する国になっても差し支えないと考えているのか?

三つ目は、中世の琉球王国の領土は、奄美群島にまで及んでいたことである。

上記の地図で明らかなように、中国はこの史実を踏襲し、奄美群島までが自国領に相当する可能性があるとしている。したがって、中国が「独立沖縄国」と共存していくのであれば、当然のように奄美群島までを同国の領土にすることを求めてくるであろう。同国の「同盟国」となる中国が南東方面へ海洋進出を強めるのであれば、ここを勢力圏にするのとしないのとは大きな違いが生じるからだ(松本氏の論考も参照)。

しかし、奄美群島は近世以来、薩摩藩→鹿児島県の領域である。当然のことながら日本国の領土にほかならない。

独立論者たちは、鹿児島県民をはじめとする日本国民に「奄美群島を割譲せよ」と要求できるのか? できないのであれば、「平和的に共存」しなければならない中国の意向と、どう折り合いを付けるつもりなのか?

この三つの課題に対して、(夢想論ではなく)私を含めた多くの人が納得できる答えが出せるのであれば、どうぞ、堂々と沖縄独立論を展開していただきたい。

(※本稿はあくまでも国を対象にした論評であり、善意の中国国民を個別に嫌悪・批判するものでは決してないことを、お断りしておきます)

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