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2019年10月23日 (水)

勘違いしてはいけない

いま、国の審議会や委員会で協議されていることの一つに、居宅介護支援費に利用者負担を導入することの是非がある。

これまで、居宅介護支援の介護報酬は、10割すべてが保険財政から賄われ、介護支援専門員の仕事である「相談援助、連絡調整」そして成果物としての「ケアプラン」作成については、利用者の家計に負担を掛けることなく実施されてきた。

財務省は国の財政難を理由に、これまで発生していなかった居宅介護支援費の利用者負担(1割~3割)を徴収しようと図り、厚生労働省にその実現を迫っている。

実際に利用者負担が課された場合、その金額はいくらになるのか? あくまでも浜松の場合の計算であるが、七級地であるため、私のような加算を取らない一般の事業所であれば、要介護1・2の利用者が月額1,080円、要介護3~5の利用者が月額1,402円となる。これは一割負担の場合だ。二割負担であればこの二倍、要介護1・2の利用者が月額2,159円、要介護3~5の利用者が月額2,804円。さらに三割負担であればこの三倍、要介護1・2の利用者は月額3,238円、要介護3~5の利用者が月額4,206円となる。これに特定事業所の加算が加わった場合には、さらに月額309円から515円の増額になる。

自己負担導入への反対意見を聴いていると、(1)市民の立場からすれば、少ない年金で細々と食べている人たちにとっては、たとえ一割負担であったとしても、決して小さい金額ではないので、これは改悪にほかならないとの論が中心になる。

また、(2)介護支援専門員の立場から見ると、この利用者負担の導入は、業務量を増やすことになる。私自身、一人親方で介護支援専門員も経営者も事務員も用務員も兼ねているので、利用者・家族から自己負担分を徴収する作業は、すべて自分でやらなければならない。介護報酬が上がらない限り、持ち出しが増えるだけの事態になり、歓迎する話ではない。

また、(3)居宅介護支援事業所とは別に、併設の在宅介護サービスを利用してほしいサービス事業者(介護福祉施設、老健、サ高住など)が、無料で自己作成支援を行う部門を設け、囲い込みケアプランの作成を助長することも懸念される。このような動きは、市民団体等に所属して真に自己作成を続けている利用者・家族への評価を貶め、自己作成の廃止に結び付く恐れもある。

また、(4)自己負担が導入されれば、専門性の劣るケアマネジャーが、利用者・家族の「料金を払っているんだ」との声に屈して、「御用聞き」「言いなり」レベルのケアプランを作成してしまう可能性がある。

他方、自己負担導入への賛成意見がある。業界の識者の中からは、(5)相談支援や連絡調整、その成果物としてのケアプランにもお金がかかることを、受益者側である利用者・家族に理解してもらうのが望ましいので、自己負担を導入すべきだとの見解がある。

また、財源論とは別に、(6)国民負担率の現状に鑑み、市民の自助・互助を推進する立場から、公助・共助による十割現物給付に依存するのではなく、介護事故が発生した当事者の市民に、しかるべき負担を求めるべきだとの考え方もある。「保険料を払っているが、保険を利用しなくても済んでいる」人たちの理解を得るように努めるべきだとの主張は、一つの見識であろう。

さて、私自身はいまの時点では、「国と関係団体等との何らかの取引材料にされない限り」との条件で、将来的な居宅介護支援の自己負担導入に対して、明確に賛成も反対もしていない。強いて言えば上記(2)の問題があるので、目先のことだけ見れば、自己負担が導入されないほうが楽ではあるが...(^^;

どうも、介護支援専門員たちによる本件に関する議論を見聞きしていると、賛成派も反対派も「どちらでもない」派も、一部の良識ある論者(私と交流のあるフェイスブック友達など)を除き、何か勘違いしている人が多いように感じるのだ。

そもそも、保険給付は利用者に対して給付されるものである。居宅介護支援事業者は、利用者から料金をもらい、その料金のうち定められた要件を満たした部分を保険が補填する。ただし、損保の交通事故補償同様、利用者の一時的な出費を避けるための「現物給付」のシステムがあるために、事実上は国保連から介護報酬として受領している。これはあくまでも保険のシステムの問題であり、形式上は前述の通りだ。

したがって、自己負担があろうがなかろうが、私の場合であれば、要介護1~2の「利用者さんから」毎月10,791円、要介護3~5の「利用者さんから」毎月14,018円の対価をいただいているはずなのだ。その重みを常に意識しながら仕事しなければならないのだ。

つまり、ケアプランの目標期間(半年とか一年とか)を平均して、月ごとに測った場合、月平均で上記の対価に見合わない仕事しかしていないのであれば、それは介護支援専門員として失格なのである。顧客からお金をもらって仕事をする以上、その顧客の最善を図るのが当然ではないか。

それが社会保険の常識なのだが、そこを勘違いしている介護支援専門員には、大切なものが見えてこない。「お客様、タダでケアプランを作成しますよ(←つまり、この理解自体が間違い)」から「お客様、これからはケアプランの料金を何千円負担していただきますよ」になるのか? そうなったら利用者や自分たち介護支援専門員にどんな影響があるのか? といった、現場のやり取りに問題が矮小化されてしまう。

自己負担してもらう金額がゼロ割だろうが一割だろうが二割だろうが三割だろうが、自分たちの持つ専門性にのっとって、利用者から「この報酬に値する」と評価してもらえる仕事をすることが、肝心なのである。

その覚悟や心掛けを持たない介護支援専門員(現場仕事をしていない管理職等の有資格者も含める)は、この事案について語る資格がない、とさえ思う。

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