どのような過程で自分を選んでもらったのか?
介護部門で数々の執筆をされているジャーナリスト、藤ヶ谷明子さんから、7年ほど前に「ケアマネジャー評価表」なるものをいただいた。かの(現場の実態を反映しているとはとても言えない(-_-;))「情報公表」の項目とは違い、市民側の視点で作られた簡便な評価表なので、いまでも毎年、自己評価に活用している。
その中に「初回訪問時、なぜ自分(自事業所)が選ばれたのか(地域包括からの紹介、ネット、自治体の一覧表etc)を確認しているか」との項目がある。正確に表現すれば、「初回訪問時、『どのような過程で自分(自事業所)を選んでもらったのか?』を確認しているか」となる。
今年もこの項目は4段階評価の「4」を付け、「いつもインテーク時に聴取している」と記載した。
さて、記載しているうちに、最近は「ご紹介(行政・医療機関・介護事業所などの関係機関からの)」の利用者さんより、「ご指名」の利用者さんが増えたなあ、と気が付いたので、数字を比較して整理してみようと思い立った。
どこで線を引くかが難しいところだが、あいまいにしてはいけないので、
・利用者さんやキーパーソンさんが「こういう希望に該当する居宅介護支援事業所は無いですか?」と関係機関等に相談し、当該機関から第一候補として私に連絡が入った。
・「ご指名」を受けてお邪魔している方の親族に当たる方の予防支援を、地域包括支援センターから委託された。
→この場合は、たとえ事実上の一択であっても、「ご紹介」に含める。
・親戚や友人から「ここのケアマネさんがいいよ」と勧められ、利用者さんやキーパーソンさんが私に連絡してきた。
・かつてご家族の誰か、または(施設入所前などに)当のご本人の担当介護支援専門員であったご縁から、利用者さんやキーパーソンさんから改めて私に連絡してきた。
→これらの場合は、たとえ起源をたどれば関係機関からの紹介であっても、「ご指名」に含める。
このルールに基づいて計算したところ、以下の結果になった。
◆2002年12月(当時の上限件数50名に達した時点。ただし、給付管理が発生していない方が2~5名程度あった)
・ご紹介 40名
・ご指名 10名 → 20%
*そのうち、認定調査(当時は新規申請分の委託もあった)終了後に、「あなたがやってくれるか?」と当所へ居宅介護支援を依頼してきた方が6名なので、
*純粋な意味での「ご指名」は4名 → 8%
◆2020年12月(居宅支援・予防支援合わせて25名。ただし、給付管理が発生していない方が3名)
・ご紹介 12名
・ご指名 13名 → 52%!
これまでのエントリーで述べてきた通り、私は2014年ころから、亡き母が支援や介護(2017~18)を必要とする状態になったことを契機に積極的な営業をせず、母の他界後には自分自身の加齢も考慮し、結果的に仕事量や範囲を縮小している。それでも、いまの利用者さんの過半数が「ご指名」なのはたいへん嬉しい事実である。
つまり、私がもっと若かったり、家庭介護を抱えていなかったりしたら、一人でいまの二倍近くの仕事をこなしていただろうから、関係機関からのお情けに頼らない「士業士」として、順調に生業が成り立っていたわけだ(人を雇わず一人で食べていく分には、であるが...)。特定事業所加算を取得して三人以上で居宅介護支援事業所を形成しなくても、一人親方で自立した営業が可能なのである。「個」としてのケアマネジャー(≧介護支援専門員)はそうあるべきだと思う。開業当時に自分が希求した「腕一本でメシを食っていける」形態を、一応達成したことになる。
もちろん、これは介護報酬の動向にも左右される。今後この「士業士」の形態を目指す若いケアマネジャーの方々は、保険外の仕事をどんどん開拓していくことが望ましい。これは以前から唱えている通りだ。私の年代で、地域の職能団体の役員まで務めていると、なかなかそこまでする余力がなかったが...
さて、長い間には、逆に利用者さん側から(施設入所や転地などではない理由で)解約されたこともしばしばある。しかし、過去に解約された利用者さんは、必ずしも「ご紹介」の方ばかりではない。「ご指名」の方でも、「いったんはあなたを選んだけれど、やはり他のところにする」となった方が何名かいる。私の業務スタイルでは仕事の進め方にパーソナルな側面が比較的強く反映されることは否めず、利用者さん側の「好き嫌い」や相性の悪さが顕在化すると、長期的に継続できなくなったこともあった。これもまた、「士業士」型だからこそ、しばしば起こり得る現象だと割り切っている(居宅介護支援事業所内の担当者変更ができないから)。
また、当然のことながら、私自身、「ご紹介」だろうが「ご指名」だろうが、どの利用者さんも「お客様」として大切にする気持ちに変わりはない。細かいことだが、利用者さん宛に封書を送るときには84円の記念切手を使うことが多い。その際に「選んでもらった過程」など関係なく、お一人ごとのお好きな図柄を推測し、気を遣いながら貼っている(ハズレがあるかもf(^_^;))。
ところで、このエントリーには、勤務(「宮仕え」)の介護支援専門員たちを過小評価する意図は決してない。独立型と勤務型とが、車の両輪のごとくお互いに高め合っていくことが理想であろう。そのためには勤務型の介護支援専門員にも一層の自覚が求められる。力量が未達なまま漫然と働き続け、資質向上への意欲も薄く、母体法人や事業所に依存して給与や賞与をもらっているようでは、半人前だなぁと見なされてもしかたがない。
どのような立場のケアマネジャーであれ、自分の力で顧客の信頼を勝ち得ていく「プロフェッショナル」の誇りを持って仕事をしたいものだ。
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