私は今年営業日だったが、一般的に祝日である5月3日は、「日本国憲法」が施行された日(1947年。今年は施行75年)である。
このところ、憲法を改正すべきか否かの議論が喧(かまびす)しくなっている。もちろん、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた現象であることは、言うまでもない。
3日にも各地で「改憲」「護憲」それぞれの側からの集会や活動が行われている。私自身は「改憲論者」であるが、たとえ定休日であっても、集会に参加することまではしていない。国の基本法が75年も改正されないことが正常だとは思えないから、国政選挙で改憲を、特に九条の改正を主張する人が立候補した場合は、他の政策に大きな違和感がない限り、その候補者に票を入れている。
他方、「護憲」を主張する人たちの大部分は、何よりも平和憲法の根幹である「九条」を守れ、と主張する。そうすることによって日本の平和が守られる、との見解なのであろう。
さて、「護憲」を謳う以上、憲法そのものを守らなければならない(当然だが...)。そのためには、「A.国民による改正(護憲論者の人たちから見れば「改悪」)をさせない」だけでは不十分だ。憲法は国内法であり、外国はこれを守る義務はない。したがって、日本の平和を守るためには、「B.外国に日本を攻撃させない」ことも保証させなければならない。もし外国が日本に侵攻(「間接的侵略」も含む)して、政治の中枢を支配してしまえば、その力によって憲法はその国の都合が好い形に変えられてしまう。
そこで、「護憲論者」の方々に質問がある。
日本に敵対的、ないしは非友好的な国が、すぐ近くに四か国も存在する。(1)竹島を一方的に自国領土へ編入して返還せず、過去に日本と締結した条約の趣旨もしばしば蔑ろにしている韓国、(2)尖閣諸島(...のみならず、遠回しな表現ではあるが、沖縄全県と鹿児島県奄美群島も含む地域まで)への領有権を主張し、領海侵犯を繰り返す中国、(3)北方四島を実効支配して返還せず、周辺海域を艦船で威嚇するロシア、(4)国交がなく、日本を敵視してミサイル発射を繰り返し、その標的に位置付けてはばからない北朝鮮だ。
「護憲論者」の方々は、これらの諸国の政治指導者に対して、上記のBを実践してもらうために、日本国憲法の理念をどのように説き、どのような回答を得ているのか?
いや、(1)韓国については、散発的(志を同じくする人たちが統一して行動しているとは、とても考えられない)ではあるが、ときの大統領や首相に憲法九条の趣旨を伝え説いている人もいる(それも、逆に相手方から利用されている場合が多いと、個人的には思うが...)。しかし、韓国が「不法占拠している」竹島を返還する動きなど全く窺えない。ましてや、(2)中国・(3)ロシア・(4)北朝鮮については、そもそも働き掛けた事実さえほとんど確認できない。もちろん、政治工作の中には公開できない部分もあることは承知しているが、これまでの状況では、防衛力に不安を抱える国民が納得できる説明責任を果たしているとは認め難い。
いま、これらの国々が「これ以上の力による現状変更」をしない最大の理由は、日米安全保障条約があり、米軍が日本に駐留しているからだ。もちろん自衛隊の強化も重要な原因である。しかし多くの護憲論者は、米国寄りの安保に反対であり、かつ日本の防衛費を削減せよと主張している。
ならば、上記の国々で、護憲論者の方々がどのような活動をして、政治指導者とどのような対話をしたのか? それに対して、相手はどう反応、回答したのか? その事実をまず説明すべきである。たとえば国連本部や国際会議の場で九条の理念を説いて、そこに韓・中・露・北などの首脳も列席していた...などとゴマかしてもらっては困る。本当に憲法九条の理念が至上のものだと信じているのであれば、相手のホームグラウンドへ赴いて直談判するのに躊躇はないはずだ。
もちろん、(2)(3)(4)は民主的な体制を採っている国ではないから、「護憲論者の代表」がしかるべきルートを経由して対話を申し入れても、拒絶されることもあるだろうし、仮に対談が実現しても、活動家側の理念を否定されて終わり、になることもあるだろう。それならそれで、「わが国の憲法九条の趣旨を尊重し、攻撃してこないことを保証せよと、○○国家主席(大統領、委員長etc.)に対話を申し入れたが、断られた」「...説得したが、否定的な回答しか得られなかった」と報告してほしい。その上で、「そこで、次のステップでは、これらの国々に対して□□□の行動を実践する」と代替案を示してくれれば、少なくとも議論の対象とすることに差し支えない(賛同できるかどうかは別として)。
「護憲論者」の活動家には、日本国内で「護憲」を叫んでいる活動家たちが圧倒的に多い。日本は言論の自由が保障された民主的な体制の国であるから、いくらでも声を上げることができる。しかし、九条を「守ってもらいたい」相手のホームグラウンドで叫ばなければ、全く意味がない。失礼ながら、「お花畑で遊んでいる姿を見せられても、議論にならない」。これが私の正直な思いだ。
いまからでも遅くないので、護憲論者のみなさんには、北京へ、モスクワへ、ピョンヤンへ行き、自らの信じる理念にしたがって、相手を説得してもらいたいものである。もしくは、すでに実践しているのであれば、その「成果」を多くの国民に対して、わかりやすい形で開示してもらいたいものである。
その報告に接したあかつきには、「改憲」と同じテーブルに「護憲」も乗せ、議論の対象として比較検討することができるであろう。
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