しょーもないケアマネをグループワークでどう料理するの?
いささか物騒な題名であるが、これは2009年、静岡県介護支援専門員協会のとある研究会に参加した際に、「困ったケアマネジャーさんって結構いるよね」みたいな話になったので、筆者がトリセツ(?)を作ってメンバーに示したものだ。
14年前の発題だが、いまでも十分通用すると思ったので、若干の校正を加えて再現したものである。
もとは表形式になっているが、ブログのエントリーにアップしにくいので、枠を取り払って箇条書きにしてみた。いささか長くなるが、ご笑覧いただきたい。
◆「確信犯的」囲い込みケアマネ
・定義:悪意で囲い込みをやるのではなく、逆に本人は善意のかたまりで、自分の所属先のサービスが至上であると信じている。そのため他法人のサービスは安心して位置付けられないから、紹介しない。
・処方箋:自法人を客観視できるためのトレーニングが必要。たとえば地域の各デイサービスに対して、機能訓練とか入浴介助とか、それぞれの部門について地域のケアマネジャーから匿名で点数を付けてもらい、皆で比較してみる。自法人の事業所だけが至上ではなく、利用者のニーズに適するサービス調整が大切であることを、参加者が共有できる場を作る。
◆コピペ‐ケアマネ
・定義:サービスがいつもワンパターン。課題分析は一応やるものの、視野が狭いのでそこから複数の解決手段を選択する段取りができない。「二言目にはリハビリ」「詰まるところはデイサービス」の人たち。
・処方箋:当人が初級者であることをズバリ指摘する。より具体的には、ケアプラン作成演習などの場で、課題分析からサービス提供に至る一連の流れを振り返る作業を何度もやってもらうしかない。ただ、一人だけ凹むと雰囲気が悪くなるので、グループで課題を共有する流れを作るのが好い。利用者の一つの課題に対する解決の選択肢が多岐にわたることを、メンバーが常に確認し合うように、意図的に仕向けていく。
◆一品料理ケアマネ
・定義:利用者や家族から希望されない限り、一品サービスだけ利用に結び付けて、それで責任が果たせたと思っている。給付管理が成立してしまえばお金になるので、ニーズの掘り起こしが面倒になり積極的に行わない。
・処方箋:たとえば、ケアマネジャーや介護サービス職員がニーズの確認を怠ったために、刑事事件で警察の事情聴取を受けたり刑事責任を問われ(疑われ)たりした事例を研修で取り上げ、「かえってお金も名誉も失うかも...」と、リスクマネジメントの見地から危機感を持ってもらうのも一策である。
◆なんちゃってケアマネ
・定義:「一応」ケアマネジャーになってはいるが、片手間仕事の意識が強く、自分がケアマネジャーだというアイデンティティを持ち得ない。
・処方箋:現場で実務に就く以上、責任感を持って仕事をすることの大切さを認識させる。グループスーパービジョンのロールプレイで、「この種のケアマネにケアプランを立ててもらう立場の利用者」の役をやってもらうのも一案である。
◆「オレオレ症候群」ケアマネ
・定義:利用者の課題を解決しようという思いが強過ぎると、自分が、自分が、と、どんどん前に出てしまい、利用者のほうが引いてしまう。
・処方箋:ベテランの社会福祉士(威厳のある人!)を指導者として登場させる。バイステックの7原則のうち、「統制された情緒的関与」「意図的な感情表出」の二点をテーマにソーシャルワークの演習を行い、自己覚知を試みる。
◆昔の名前で出ています♪ ケアマネ
・定義:かつては地域のケアマネジメントを担う指導的立場にあったが、いまは主流から外れているのにもかかわらず、いまだに業界の指導者だと自任している。
・処方箋:気持ち好く振る舞ってもらえば良い。かつて地域で功績があったことは事実。指導者のほうが後輩の立場なのだから、相手を先輩として敬い、自尊心をくすぐった上で、得意部門を生かしてもらうべくポジティブに誘導していく(ただしホントに重要な役には就けずにホしておく!)のも、人材活用のポイント。
◆放浪ケアマネ
・定義:転職を繰り返すタイプ。ただし建設的な転職もあるので、決して転職を重ねること自体がマイナスではない。ここに掲げるのは、自分の労働環境への不満ばかり口にして、利用者に対しての責任感が希薄な人のことである。
・処方箋:グループワークの場で、各メンバーが自事業所の労働環境について語る場を指導者が設け、「あらゆる面で理想的な職場」など存在しないのだと理解させる。たとえば指導者から、「次に転職するときには、利用者ごと転職したらどうですか?」と勧めてみる。利用者側にとって、頻繁にケアマネジャーが変わることは迷惑にほかならないことを認識してもらう。
◆「オヨヨ」ケアマネ
・定義:身の丈に合わない自称やハッタリで注目されても、現実には中身がない。人前では自分が知っている著名な業界人の名前を並べ立てるが、実際に役立つネットワーキングができておらず、コーディネート能力も欠如している。
・処方箋:はっきり言えば業界から消えて欲しいタイプである。それでも仕事を続けるのなら、会合や研修の場で偉そうなことを述べ立てても、指導者やメンバーが相手にせず受け流し、徹底して無視するのが良い。当人が空虚な引き出ししか持ち合わせない、いかに哀れな小物であるかを自ら痛感させる。それでも悟らなければ手の打ちようがない。
以上。いかがだろうか?
筆者自身も、気付かないうちにこれらの類型のどれかに当てはまっていないか、日頃から振り返っている。
地域のケアマネジャー仲間にこのテの人たちがいると結構扱いにくい。とは言え、日本全国でケアマネジャーの人材不足が取り沙汰される昨今、路線から大きく外れる人を出さない工夫も大切だ。地域のケアマネジャー連絡組織の指導者さんをはじめとする主任介護支援専門員さんたちには、多少なりとも参考にしていただければ幸いである。
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