主役はあなたではない
先般実施された兵庫県知事選挙について、当選した知事の広報戦略全般を担ったと称するPR会社の社長が公開した内容が、物議を醸しており、公職選挙法に違反するのではないかとの疑惑も噴出している。
公選法云々はともかく、この社長はプロフェッショナルとして失格である。
その理由は、クライエント(ビジネスでは「クライアント」と表現することが多い)の内情を、かなり具体的な内容に至るまで開示してしまっているからだ。
記述の内容次第だが、守秘義務違反に当たる可能性もある。
私たちケアマネジャーの場合であれば、クライエントである利用者の尊厳を守り、より望ましい主体的な生活を実現させるため、地域資源を組み合わせて最善の支援体制を構築するのが仕事である。もし、ケアマネジャーが主役である利用者を差し置いて、「オレ(アタシ)が○○さんを支援したから、○○さんはこんなに活き活きと暮らせるようになったんだ!」と前面にしゃしゃり出たとしたら、これは側面的支援を職能とするプロのケアマネジャーとして失格である。加えて、個人情報の目的外使用にも当たるものであり、専門職として踏むべき規範を逸脱している。
(利用者や家族の同意を得て、匿名の状態にしてから研修の場などで発表する場合など、例外もある)
PR会社がどこまで有償で働き、どこからは無償で働いたかは、(公選法に抵触しない限り)大きな問題ではない。対価をもらった場合であれ、ボランティアとして働いた場合であれ、今回支持した候補(知事)の選挙戦略をめぐる情報は、いわば陣営の内部情報であり、個人や個別の会社の了見で開示して良いものではない。この記載内容ほどあからさまに経過を語れば、法的な問題がなくても、陣営の機密情報に触れる可能性が強いからだ。同社長が経過を開示した行為は、戦略担当としての本分にも背く行為であろう。
一言で表現すれば、本来は黒子に徹しなければならない人(企業)が、調子に乗って主役の位置にしゃしゃり出ようとした末路であろうか。主役はあなたではないと、誰かが忠告してあげられなかったのか?
私たちも、これを他山の石として学ぶべきだと考える。
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